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JICA研究所とGDNによるカイゼンについての共同研究がスタート

2017年8月1日

エチオピアではJICAの協力でカイゼンが普及(写真:JICA/今村健志朗)
エチオピアではJICAの協力でカイゼンが普及(写真:JICA/今村健志朗)

開発途上国と先進国の研究者ネットワークであるGlobal Development Network(GDN)とJICA研究所は、「KAIZEN(カイゼン)」の名で世界に知られるようになった日本式の生産性向上・品質管理手法に関して、共同研究「開発のための生産性向上~KAIZEN事例分析~」を開始しました。そのキックオフ会合として、GDN側からこの研究に参加するブラジル、ガーナ、フィリピン、ベトナムの執筆チームを対象に、2017年6月19日から22日の4日間にわたり、カイゼンについてのセミナー、現場視察、ワークショップが行われました。

6月19日は、カイゼンについての知識を深めるセミナーをJICA研究所で開催しました。まず、JICA専門家として開発途上国でのカイゼン普及に携わってきた株式会社日本開発サービスの菊池剛シニアアドバイザーが、カイゼンとは何か、日本での歴史、日本のODAを通しての途上国へのカイゼンの普及などを説明しました。その後、富田洋行JICA産業開発・公共政策部民間セクターグループ課長が民間セクター開発におけるJICAの取り組みについて、また神公明JICA産業開発・公共政策部専任参事がエチオピアのカイゼン・プロジェクトについて、それぞれ紹介しました。

続いて、今回の共同研究の編者である3人がそれぞれ発表を行いました。

JICA研究所でのセミナーで、中米8カ国でのカイゼンのインパクトについて発表する島田剛招聘研究員
JICA研究所でのセミナーで、中米8カ国でのカイゼンのインパクトについて発表する島田剛招聘研究員

JICA研究所の島田剛招聘研究員(静岡県立大学准教授)は、中米8カ国を対象にしたJICAのカイゼン・プロジェクトが労働者の労働環境や賃金へどのようなインパクトを与えたかについて、政策研究大学院大学の園部哲史教授との共同研究を報告しました。この研究では、276社のカイゼン導入企業と非導入企業の経営者と労働者からデータを収集し、分析を行いました。その結果、カイゼンの導入により経営者は労働者の働き方が良い方向に変わったと感じており、また、労働者の仕事への参加度も高まっていることが確認されました。ただ、特に労働者が新しいイニシアティブを受け入れ、カイゼンが定着するにはやや時間がかかることも確認され、今後の協力を実施する上で留意すべきであると述べました。

また、JICA研究所の細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザーは、カイゼンのユニークさは、参加型学習のプロセスを通して人々の潜在能力を引き出し、TQC(総合的品質管理)の向上につながり続けるという好循環にあることを図で示しながら説明しました。カイゼンは国際協力の観点から見ても、全員が参加し自ら考えて行動できる人々の能力開発につながるインクルーシブなアプローチであるほか、無理、無駄、ムラをなくすことが生産性を向上させると同時に、より環境に配慮するアプローチであり、「質の高い成長」に寄与すると述べました。

さらに、米国ブルッキングス研究所のジョン・ペイジ上級研究員は、産業政策の目的である経済活動と構造転換の促進は、規制改革と、経営者や従業員の能力強化を通じて可能になることを説明しました。インドやタンザニアでの経営研修を具体例に挙げ、カイゼンは企業の能力向上に役立つアプローチであると結論づけました。

それぞれの発表の後には質疑応答が設けられ、参加者からは「小規模な投資と大規模な投資ではどちらがカイゼンに適しているか」「カイゼンを実践し続けるモチベーションをどのように保つのか」など、積極的に質問が挙がりました。

セミナーや現場視察での学びを踏まえ、ワークショップでそれぞれのグループが今後の研究について発表
セミナーや現場視察での学びを踏まえ、ワークショップでそれぞれのグループが今後の研究について発表

2日目の6月20日には、愛知県にあるトヨタ自動車株式会社の田原工場を訪れ、自動車の組み立てラインでのカイゼンの取り組みを視察したほか、トヨタ会館とトヨタ産業技術記念館も訪問。執筆チームに、トヨタ生産方式を通したカイゼン活動の現場を伝えることができました。

そして3日目と4日目は、JICA中部でワークショップを開催し、前日までのセミナーと現場視察を通じて整理された知識を踏まえ、各執筆チームが研究内容のプロポーザルを発表し、参加者全体で議論が行われました。

この4日間を通し、編者と執筆チームで方向性を共有し、また執筆チーム同士も互いの研究を知り、議論することで、順調にスタートラインに立つことができました。今後は、2018年2月以降に第1回目の論文提出と中間レビューワークショップが開催される予定です。

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