JICA研究所

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マレーシアでJICA研究所が「障害と教育」研究プロジェクトの成果を発表

2017年8月16日

障害児教育への障壁について発表する亀山友理子元JICA研究所研究員(左)
障害児教育への障壁について発表する亀山友理子元JICA研究所研究員(左)

2017年7月31日から3日間にわたり、マレーシアのボルネオコンベンションセンターにて特別支援教育国際会議(ICSE)が開催され、8月1日にJICA研究所が「障害と教育」研究プロジェクトの成果を発表しました。

ICSEには32カ国から約650人が参加し、障害者教育に携わる実務者、研究者、医療従事者、政府関係者、開発援助関係者など、さまざまな立場から議論が行われました。研究者からは障害がある子どもとない子どもが同じ教室で学ぶ「インクルーシブ教育」実現のための重要な要素について発表され、また、実務者からはICTや先進技術を活用した事例が発表されるなど、今後の障害者教育の発展の可能性を共有しました。

JICA研究所からは、アジアにおける障害児教育とインクルーシブ教育をテーマに、「障害と教育」研究プロジェクトの全体像、研究の目的と手法の紹介に加え、モンゴルやカンボジアでの分析をふまえた成果について、同研究に携わってきた3人の研究者がそれぞれ報告しました。

亀山友理子元JICA研究所研究員(早稲田大学招聘研究員)は、保護者と教員それぞれの視点から見る障害児教育への障壁について、モンゴルでの意識調査の結果を報告しました。障害のあるなしにかかわらず、等しくより良い教育機会を提供するためには、教員の訓練だけではなく、物質的かつ金銭的な要素を含めた包括的な介入や、教員や保護者、普通学校と特別支援学校との垣根を超えた連携の強化が必要であることなどを提言しました。

内海悠二元JICA研究所非常勤研究助手は、モンゴルにおける障害のある非就学児の状況について報告。障害のある子どもは実年齢よりも下の学年に所属する傾向があり、特に小学校1年生での退学率が高いことを示しました。彼らが正規の学校に行かない理由として、障害そのものに加え、周囲の理解の低さや学校へのアクセスの悪さなどが挙げられました。さらに、障害のある非就学児は学校に行く代わりにテレビを見たり遊んだりして過ごす傾向が高く、非正規の教育を受けたことがある割合は22%に過ぎないことを発表しました。

モンゴル・ウランバートルの特別学校で学ぶ子どもたち(写真:JICA/今村健志朗)
モンゴル・ウランバートルの特別学校で学ぶ子どもたち(写真:JICA/今村健志朗)

黒田一雄JICA研究所客員研究員(早稲田大学大学院教授)と共にカンボジアでの分析を担当したダイアナ・カルティカ氏(早稲田大学研究助手)は、教員のインクルーシブ教育に対する視点に影響を与える要因について報告しました。障害のある子どもたちの教育の需要に応え、教員の障害児への指導経験を増やすためには、質の高い教員へのトレーニングと現場での支援の体系的な手法を確立すること、また、障害に対する社会の関心の向上、NGOやドナーの連携などが必要であるといった政策提言を行いました。

会場からは「今後この研究成果をどのように実務に生かすのか」という質問が挙がり、亀山研究員は「モンゴル政府やカンボジア政府との協議や、JICAプロジェクトへの貢献に向けた連携の実績があることに加え、ドナーや実務者に向けたプレゼンテーションを今後も実施していく」と回答しました。

この発表を通して、開発途上国の障害者教育の実務者や政府関係者に対して研究結果を共有し、関心を得ることができたと同時に、他の参加者との交流の中で同研究プロジェクトではふれられなかった視点について情報を得ることもできました。今後も新たな考察を加えた論文の発表など、研究成果の発信を行っていきます。

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