JICA緒方研究所

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アフリカ・アジアの今後を考える上海会議でJICAのアフリカへの協力について発表—北野所長ら

2017年12月6日

北野所長が登壇したパネル6には若手研究者も参加(写真提供:ハーバード大学アフリカ研究センター)

ハーバード大学アフリカ研究センター主催、同大アジアセンター、フェアバンク中国研究センターなどの共催による「Shanghai Conference on Africa and Asia—Africa-Asia Connections: Bridging Past, Present, and Future」(以下、上海会議)が、2017年11 月16、17 日に中国・上海で開催されました。オープニング・セッションと6つのパネルセッションなどから構成され、JICA研究所の北野尚宏所長がパネル1と6に登壇、JICA中国事務所の宮崎卓次長がパネル2「Infrastructure, Trade, and Industry」の司会を務めました。

上海会議では、学際的な領域の研究者、政策立案者、民間セクターによる対話の場をつくることが意図され、各分野から約50人が参加し、「移民、援助、貿易」、「環境科学、インフラストラクチャー、産業」、「保健分野のパートナーシップ」の3つのテーマを対象に議論が行われました。

北野所長は、パネル1「Broad Perspectives: India, Japan, and China in Africa」に討論者として登壇。日本の経験に基づくアフリカにおける開発協力の事例を紹介し、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)は開かれた包括的なフォーラムであることを強調するとともに、JICAの取り組みとして食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)に言及しました。

また、登壇したパネル6「Africa and Asia: The Way Forward」では、アフリカが直面する課題への対応として、TICAD VIで合意された「ナイロビ宣言」の3つの柱(1. 経済の多角化・産業化、2. 保健システム促進、3. 社会の安定化)に基づくJICAのアフリカへの協力の特徴を、事例とともに発表しました。

北野所長はJICAのアフリカへの協力を紹介(写真提供:ハーバード大学アフリカ研究センター)

一つ目の柱については、質の高いインフラの事例としてケニアのオルカリア地熱発電開発や物流網である経済回廊を整備するマスタープラン策定を、民間セクターとの連携事業として味の素株式会社によるガーナでの栄養改善プロジェクトをそれぞれ紹介しました。また、日本とアフリカの相互信頼に基づく長期的な協力事例として、1978 年から続くケニアのジョモ・ケニヤッタ農工大学への協力を取り上げました。スケーリングアップの事例としては、日本の経営哲学に基づくKAIZEN をアフリカ広域へ展開するアフリカ・カイゼン・イニシアチブや、心理学を応用したケニアでの小規模園芸農家への支援がアフリカ23カ国へと発展したSHEPアプローチなどを紹介しました。

二つ目の柱に関しては、全ての人が保健サービスにアクセスできることを目指すユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の事例としてケニアの保健政策を支援する円借款を、三つ目の柱については、JICA研究所もインパクト分析に関与しているエビデンスベースの協力として、食料不足の解消に貢献するアフリカ稲作振興のための共同体(CARD)イニシアティブなど、JICAの多岐にわたる協力について紹介しました。

最後に、北野所長はJICAの新ビジョン「Leading the world with trust(信頼で世界をつなぐ)」に触れ、今後のアフリカへの協力においても相互の信頼関係が重要であることを強調しました。会場からは、質の高いインフラの定義や、アフリカにおけるNGO との協力の現状などについて質問が挙がり、日本とアジア、アフリカとの関係について考える貴重な議論の場となりました。

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