JICA緒方研究所

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災害レジリエンス構築のための科学・技術国際フォーラムで災害リスクガバナンスについて発表—ゴメズ研究員

2017年12月26日

ゴメズ研究員が災害リスクガバナンスを推進するための課題を説明(写真提供:稲岡美紀)

JICA研究所のゴメズ・オスカル研究員が、2017年11月23~25日に東京の日本学術会議で開催された「災害レジリエンス構築のための科学・技術国際フォーラム2017」に参加しました。このフォーラムは、科学・技術の活用によって災害リスクの軽減に貢献し、仙台防災枠組における4つの優先行動を着実に実施することを目的に開催されたもので、200人を超える参加者が集まりました。

ゴメズ研究員は「Priority 2: Strengthening Disaster Risk Governance to Manage Disaster Risk」と題したセッションに登壇。自身の研究結果に基づき、国際協力の観点から災害リスクガバナンスを推進する上での課題を説明しました。

第一に指摘したのは、国の災害危機管理を担当する省庁は、災害時という非常事態におけるパフォーマンスで評価されてしまうということです。対処に成功すれば、政治的な後押しを得て災害リスクの軽減(Disaster Risk Reduction: DRR)を推進しやすくなります。DRRとは、災害リスクの発生要因の分析と削減を通じて、災害リスクを軽減する体系的な取り組みのことです。その一方で、非常事態のニーズに対応できなかった場合は、その後のDRR計画全体に支障が生じる可能性があると述べました。

また、国際的な支援体制が依然として人道支援と開発支援に分断されており、支援を受け取る側の需要ではなく、支援する側の供給のための体制となっていることも、効果的な災害リスクガバナンスにとっての課題であると指摘しました。ゴメズ研究員は、1998年にホンジュラスを襲ったハリケーン「ミッチ」の事例と2013年にフィリピンに上陸して被害を与えた台風「ヨランダ」の事例を比較し、現地政府のリーダーシップが弱い場合、復興だけでなくDRRについても、ドナーから長期にわたる支援を受け入れ続けなければならないと述べました。一方で、現地政府のリーダーシップが強い場合、国際社会の支援は比較的早期に終了する傾向があり、その結果、復旧支援のみに大きな資金が集まることとなります。こうした状況を鑑みれば、緊急時に集まった資金をその後の復興とDRRにも活用できるようにする戦略の立案が必要です。

最後に、ゴメズ研究員は、防災分野の研究は依然として従来の学問領域に付随するものと見なされていると述べ、災害リスクガバナンスの学術コミュニティー拡大への投資の必要性を指摘しました。「国際的な交流を通じて防災に関する知見を深めることはできるものの、各国の現地政府の能力向上への近道はない。したがって、各地で研究者と実務家のコミュニティーをいかにつくっていくかを考えるべきだ」と強調しました。

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