JICA緒方研究所

ニュース&コラム

インドでの第18回GDN年次総会でJICA研究所が「科学技術とイノベーション」をテーマにセッションを主催

2018年3月27日

開発途上国の研究能力の開発とネットワーキングを目的としたグローバル・ディベロップメント・ネットワーク(Global Development Network:GDN)の第18回年次総会が、2018年3月22、23日にインドのニューデリーで開催されました。今回は「開発のための科学技術とイノベーション(Science Technology and Innovation for Development)」がテーマに掲げられ、インドをはじめ46カ国から約300人が集い、JICA研究所からは北野尚宏所長らが参加しました。

国際開発日本賞のファイナリストたちを表彰する北野所長(左)

まず22日には、北野所長をモデレーターとして、国際開発日本賞の一つである「最も革新的な開発プロジェクト(Japanese Award for Most Innovative Development Project)」のセッションが行われました。同賞は、途上国のNGOによる能力開発や雇用創出に向けた開発プロジェクトを発掘・助成するため、日本政府の資金により授与されているものです。今回は「スキル開発と雇用創生」をテーマに、ファイナリスト3人が登壇し、それぞれのプロジェクトについてプレゼンテーションを行いました。

SERMA Africaのアブラハム・ブンクァ氏は南スーダンでの油糧作物栽培と搾油を導入するアグリビジネスを通じた貧困削減について、South Asian Forum for Environment(SAFE)のディパヤン・デイ氏はインド東部ブラマプトラ川で水上生活をする人々の生計手段として、洪水にも耐える水上水耕栽培プロジェクトについて説明。そしてDandora Dumpsite Rehabilitation Group(DADREG)のジョージ・オニャンゴ氏は、ケニア・ナイロビでごみ拾いで生計を立てる(スカベンジャー)女性を対象とした代替生計手段としての農業技術普及プロジェクトについて紹介しました。同賞の選考結果は23日の閉会式で発表され、SAFEが1位に選ばれ、北野所長から日本賞が贈られました。2位はSERMA Africa、3位はDADREGでした。

もう一つの国際開発日本賞である「開発分野に関する傑出した研究(Outstanding Research on Development)」では、1位はなく、メキシコとトルコの自動車産業における職業訓練の比較をしたメルヴェ・サンジャック氏の研究と、エチオピアのコーヒー農家が資格取得と契約農家となることによる効果に関するヤデタ・ベケレ氏の研究がそれぞれ2位に選ばれました。

各国のケーススタディーを紹介したJICA研究所主催のセッション

また、23日にはJICA研究所主催のセッション「持続可能な開発目標(SDGs)に向けた科学技術とイノベーション(STI):インド、ルワンダ、ベトナムの経験」が開催されました。北野所長がモデレーターを務め、JICA研究所の鎗目雅招聘研究員(香港城市大学准教授)、Godrej & Boyce Mfg. Co. Ltd.のサンジャイ・ロニアル氏、富士通株式会社の田代真人氏、ルワンダICT商工会事務局長のアレックス・ンナレ氏が登壇しました。「SDGsに向けて途上国にはどのような挑戦・課題があるのか」「SDGs達成のためにSTIが途上国にどのような機会をもたらすことができるか」「公的政策と組織デザインを通じて途上国はどのようにSTIを最大限活用することができるか」という3つの問いに応える形で、それぞれ事例を紹介しました。

日本のスマートシティー開発を事例に発表した鎗目招聘研究員

鎗目招聘研究員は日本のスマートシティー開発を事例にイノベーションのデジタル化とSDGsへの提言を発表し、ロニアル氏はインドの農村地域のニーズに応える省エネルギーかつ安価な冷蔵庫の開発・普及活動を紹介しました。田代氏はベトナムで携帯電話を活用し、安全性と信頼性を最大化しつつ農業の効率性向上と費用の最小化を可能にした取り組みを紹介。ンナレ氏はルワンダにおけるICT、特にインターネットとファブラボなどのオープンイノベーションハブの普及状況とそのインパクトを紹介しました。これらのインド、ベトナム、ルワンダの事例は、それぞれJICA事業と関わりのある取り組みです。その後のフロアとの活発な質疑応答では、国レベルのイノベーション・システムの重要性や国が触媒となって民間企業や人々がイノベーションを起こせるスペースを提供する重要性が確認されました。

今回のテーマである「科学技術とイノベーション」は、米国戦略国際問題研究所(CSIS)との共同研究をはじめ、JICA研究所も注目して取り組んできた分野です。今回のGDN年次総会を通じてさまざまな国・地域の研究者らと情報共有ができ、今後の研究所での取り組みに向けた貴重な機会となりました。

関連リンク

ページの先頭へ