GDNとのKAIZEN共同研究で中間執筆者会合をタイで開催

2018.05.16

開発途上国と先進国の研究者ネットワークであるGlobal Development Network(GDN)とJICA研究所は、共同研究「開発のための質と生産性向上~KAIZEN事例分析~」の中間執筆者会合を2018年4月21~24日の4日間、タイで開催しました。

2016年に開始したこの共同研究は、生産性向上に向け途上国で実施されているKAIZENのケーススタディーを取り上げ、その効果を分析して課題を洗い出し、提言につながる議論を書籍化することを目的としています。執筆者会合は、2017年6月に日本で開催されたキックオフ会合に続き2回目。共同研究の編者であるJICA研究所の細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザーや島田剛招聘研究員(明治大学准教授)、米国ブルッキングス研究所のジョン・ペイジ上級研究員のほか、日本からの執筆者やガーナ、フィリピン、ブラジル、ベトナムの執筆者チーム、アドバイザーとして政策研究大学院大学の園部哲史副学長らが参加しました。

今回は、各執筆者グループが先立って提出した9つのケーススタディーの初稿について発表し、最終稿に向けた意見交換を行いました。ケーススタディーはそれぞれの特徴により、書籍の中で次の3つのカテゴリーに分けられる予定です。

一つ目の「KAIZENの導入」のカテゴリーは、①エチオピアと南アフリカでの教育セクターにおけるKAIZENトレーニングの効果、②エチオピアにおける産業政策としてのKAIZEN導入の成功要因、③マレーシア・インドネシア・ミャンマーにおけるKAIZENの導入と官民の役割についての研究で構成されます。

二つ目の「大企業におけるKAIZENの効果」のカテゴリーは、①メキシコの自動車産業を対象としてメキシコ地場企業がGlobal Value Chainに参画するためにKAIZENの果たす役割、②南アフリカにおけるトヨタ生産方式(TPS)導入の競争力への効果や学びへの影響、③ブラジルの大企業における経営へのKAIZENの効果についての研究から成ります。

三つ目の「中小零細企業におけるKAIZENの効果」のカテゴリーは、①ガーナの停滞している中小零細企業の経営能力の向上におけるKAIZENの効果、②ベトナムの村落部にある中小企業集積地におけるKAIZENトレーニングの影響、③フィリピンの中小零細食品製造業におけるKAIZEN支援活動の効果についての研究で構成されます。

ケーススタディーについて発表するJICA研究所の坂巻絵吏子職員(左)とJICAの鈴木桃子職員

各執筆者グループの発表に対し、最終稿に向け全体で意見交換

日本の執筆者として、「KAIZENの導入」のカテゴリーからはJICA産業開発・公共政策部の鈴木桃子職員とJICA研究所の坂巻絵吏子職員が発表。「教育セクターにおけるKAIZENトレーニングは学生の就業率向上に効果的か」をテーマに、エチオピアでの産業技術教育訓練(Technical and Vocational Education and Training: TVET)と、南アフリカの工業大学などでのKAIZENを取り入れた産業人材育成研修を対象とした研究の中間結果について、KAIZENを通して習得したスキルは就業で必要とされるスキルと共通していること、TVET では仕事に対する心構えや職業倫理に、大学では論理的思考や問題解決能力などの醸成に重点を置いていること、KAIZENは実践を通して学ぶことが効果的であることなどを報告しました。

またJICAからは、ケーススタディーを執筆中の本間徹国際協力専門員や産業開発・公共政策部の片井啓司職員、神公明職員、JICA横浜の石亀敬治職員も発表を行いました。

さらに、途上国での最先端のKAIZENの現場として自動車部品メーカーである株式会社デンソーのサムロン工場(1972年操業開始)と、大学でのKAIZENの取り組みの現場として卒業生の就職率100%を誇る泰日工業大学での調査も実施しました。

泰日工業大学でどんなKAIZENの取り組みをしているか調査

この中間執筆者会合を通じて、書籍全体の構想を共有し、今後の執筆の方向性を明確にすることができました。同書籍は、2019年秋ごろ、第7回アフリカ開発会議(TICAD 7)に合わせて発行する予定です。

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