ミャンマーでの給水事業の効果検証に向けベースライン調査をモニタリング—浅岡主任研究員ら

2018.07.13

JICA研究所は、2018年1月から新たな研究プロジェクト「ミャンマーにおける都市給水事業に関する実証研究」を開始しました。同年5月、現地でベースライン調査が開始されたタイミングにあわせ、同研究に携わるJICA研究所の浅岡浩章主任研究員、神戸大学の島村靖治准教授、アジア工科大学院および国際半乾燥熱帯作物研究所(ICRISAT)の津坂卓志氏が、モニタリングのため現地を訪問しました。

同研究は、インフラ事業によるインパクトの実証分析を進めるJICA研究所の強みを生かし、JICAの無償資金協力「マンダレー市上水道整備計画」を対象に、上水道整備のより詳細な効果を検証するものです。この事業では、ミャンマー第二の都市であるマンダレー市南部のピジータゴン・タウンシップで配管給水施設を新設します。現在、同地域の住民の多くは各戸に浅井戸を所有しており、生活用水のほとんどはその井戸からポンプでくみ上げ、飲料用には主に20リットルが入ったボトルの水を購入している状況です。一般世帯は自らの判断で井戸掘削を行うため、行政側は正確な井戸の所在や使用水量を把握していません。近年、この地域では地下水位が低下し、井戸をさらに深く掘削しなければ水がくみにくくなっています。野放図な地下水利用は短期的には住民に便益をもたらしても、長期的には水アクセスに関する脆弱性やリスクをもたらす要因となり得ます。

住民にインタビューする浅岡浩章主任研究員(左端)。右奥に住民が購入している20リットルのボトル水が並ぶ

調査地でよく見られるのが、地中から塩ビ管でくみ上げる浅井戸とコンクリート製の水タンク

同事業では、上水道施設として、生産井戸2本、配水池、排水ポンプ場、配水管、塩素消毒施設、給水管を整備し、各戸の水道メーターの設置まで行います。ただし、配管給水に接続した家庭でも、住民が全ての水源を水道に頼るとは限らず、飲用ではボトル水との競合、生活用水では井戸水と併用すると推察されます。そこで本研究では、事業が対象とする地区と隣接する比較地区を設定し、1350世帯の自宅を訪問して世帯調査を行い、水の利用パターンや厚生水準の変化を見ることで事業の効果を検証することにしました。調査では、利用している水源、水の利用量、費用、水質への満足度、上水道への支払い意志額などに加えて、世帯の各構成員の詳細情報、疾病状況、生活への満足度やコミュニティーとのつながりなどを聞き取ります。

調査は、ベースライン調査、ミッドライン調査、エンドライン調査、それらの間をつなぐ水利用の月次記録で構成されます。2018年5月からベースライン調査を開始し、エンドライン調査は1年後の同時期を予定しています。このベースライン調査のモニタリングのため、2018年5月6~25日に浅岡主任研究員らが現地を訪問し、調査ツールであるタブレット端末を用いた質問票の改善と確定、調査員に対するトレーニングへの指導を行いました。当初は一世帯当たりの調査に長時間かかりましたが、改善を通じて時間の短縮と調査の質の向上につなげました。同研究ではエンドライン調査までのデータを用いて、1年間でどのような変化が生じているかなどの経過を観察し、この事業による効果検証の分析を進めていく予定です。

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