JICA緒方研究所

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台風ヨランダからの復旧・復興支援で得た教訓を未来へ—プロジェクト・ヒストリー出版記念セミナー開催

2018年6月28日

書籍の概要を説明した見宮美早JICA職員(右)と平林淳利JICA国際協力専門員

JICA研究所は、2018年6月21日、JICA事業の軌跡をまとめた書籍シリーズ「プロジェクト・ヒストリー」第19弾『屋根もない、家もない、でも、希望を胸に フィリピン巨大台風ヨランダからの復興』の出版記念セミナーを開催しました。

最初に、JICA研究所の萱島信子所長があいさつに立ち、「『プロジェクト・ヒストリー』シリーズで防災をテーマにしたのは本書が初めて。復旧・復興に向けて人々がどう考え、行動したのか、生の現場を肌で感じてもらえれば」と述べました。同書は、2013年11月にフィリピンを襲った台風ヨランダの被災地に対する日本の支援の取り組みを紹介しています。

まず、本書の著者である平林淳利JICA国際協力専門員が、書籍化の趣旨と概要を紹介。「次に災害が起こったときにどのような復興支援が可能か議論できるよう、ヨランダの被災地支援の現場の視点を共有するため、活動を記録に留めた」と述べました。また、もう一人の著者であり、被災当時JICAフィリピン事務所員だった見宮美早職員は、「災害大国のフィリピンでJICAは緊急援助の経験を積んでいたにもかかわらず、ヨランダはその経験値を超える桁違いの災害だった」と振り返りました。

復旧・復興プロジェクトでは、ハザードマップの作成など多様な支援を展開

緊急援助に続いて始まった復旧・復興支援プロジェクトは、「日本が提唱し仙台防災枠組みの4つの柱の一つとして採択された『より良い復興(Build Back Better)』に基づいて何ができるか、フィリピン事務所員が次々に現場に行きながら考えた」と見宮職員が話すように、現地のニーズを拾いながら、JICA関係者、開発コンサルタント、日本の地方自治体など、多様なアクターが支援に参加しました。被災したインフラの復旧や機材供与を目的とした無償資金協力のための調査、高潮などに対する正確なハザードマップの作成、それに基づく土地利用計画や避難計画の作成、養殖といった住民の生計向上、人材育成など、その内容は多岐にわたります。

このプロジェクトに携わったメンバーでパネルディスカッションが行われ、当時の支援を振り返り、自分たちができたこと、できなかったこと、また今後に生かせる教訓などについて、多様な視点から話し合われました。

臨場感が伝わるようにと活動時に着ていたおそろいのポロシャツで登壇。左から佐々木隆宏氏、山本敦彦氏、高橋宗也氏

当時JICAフィリピン事務所長だった佐々木隆宏氏(現・東京大学イノベーション推進部特任研究員)は現場の話を聞く重要性にふれ、もともと貧困層が多い被災地の人々の生計向上支援をしてほしいというフィリピン側のニーズを拾い、ビジョンを共有したことを説明。ただ、JICAや開発コンサルタントの活動は時限的であり、課題解決に持続的に取り組むには、現地のNGOなどとのパートナーシップを平時から築いておく必要があると言及しました。

また、被災1カ月後から現地に入り、ニーズアセスメントを担当した株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバルの山本敦彦氏は、住民の生計回復やインフラ整備に当たって、日本の技術や製品をそのまま持ち込むのではなく、持続性を考え、現地で手に入る素材を活用した例として、台風に強い養殖用の浮沈式筏の開発を紹介しました。また、現地の地方自治体に長期的なビジョンを共有する難しさや、被災初期に人々が求めているニーズに迅速に応えられる仕組みを作る必要性を強調しました。

東日本大震災で被災した宮城県東松島市の市役所職員だった高橋宗也氏(現・宮城県議会議員)は、世界に向けて恩返しをしたいとJICAの事業に参加したと説明。「復興には住民との合意形成が何より重要です。同じ被災経験を持つからこそ、自分の話を理解してもらえることが多かった」と話し、フィリピンからの研修生の同市への受け入れなどの交流が、東松島市民の心を豊かにしていることも紹介しました。

会場からは、現地のNGOとの連携や、目先のことに目が行きがちな状況でどう全体像を見るのか、チームをどのように一つにまとめるのかといった質問が挙がり、今後の防災分野の支援に向け、多様なアクターとのネットワーク構築や、ビジョンを共有するためのプラットフォームづくりの必要性が改めて語られました。

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