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バングラデシュはなぜ「奇跡」の発展を遂げたのか? 書籍発刊セミナー開催

2018年9月21日

約100人が参加し、発展を続けるバングラデシュへの関心の高さが伺えた

JICA研究所の研究プロジェクト「バングラデシュにおけるリスクと貧困に関する実証研究」の成果をまとめた書籍『Economic and Social Development of Bangladesh: Miracle and Challenges』の発刊を記念したセミナーが、2018年8月27日にJICA研究所とアジア開発銀行(ADB)の共催で開催され、約100人が参加しました。

同書は、「奇跡」と呼ばれるバングラデシュの目覚ましい発展の要因を、豊富なマクロデータに基づく定量的な手法で多面的かつ詳細に分析したものです。2017年までJICA研究所の客員研究員として同プロジェクトをリードした澤田康幸現ADBチーフエコノミスト、JICA研究所のミンハジ・マフムド招聘研究員(Bangladesh Institute of Development Studies シニア研究員)、北野尚宏客員研究員(当時はJICA研究所長)が共同編者を務めました。

同セミナーでは、まずJICA研究所の萱島信子所長が開会のあいさつに立ち、バングラデシュの成長の要因が農業から非農業経済への構造転換だったことなどに触れ、「JICAは同国を1973年から支援し、長きにわたり友好関係を築いてきた」と述べました。また、さまざまな世代・国出身の研究者と協力しながら研究成果をまとめた編者の功績を称えました。

次に駐日バングラデシュ人民共和国大使館のラバブ・ファティマ特命全権大使は、「バングラデシュは1971年の独立後、次第にビジネス投資の場としてのポテンシャルを広げており、開発のロールモデルとされている。この成長を持続できるよう、今後も実り多き協働に期待する」とJICAとADBのこれまでの貢献に感謝の意を表しました。

書籍の内容について紹介した澤田康幸ADBチーフエコノミスト

続いて、澤田チーフエコノミストが本書の概要を説明。第1部では縫製産業や医薬品産業の成長やインフラへの投資が農業以外の就労機会を生み、人々の所得向上につながった経済改革、第2部ではグリーンレボリューションによる農業の生産性向上や、NGOやマイクロファイナンス機関(Micro Finance Institutions: MFIs)による女性のエンパワーメントといった支援による社会変化、第3部では貧困削減や生活水準の向上といった福祉面の改善、第4部ではバングラデシュの成長における今後のリスクや課題について書かれていると述べました。

近年、バングラデシュの経済成長率は6~7%という高水準を維持し、世帯収入も上昇しています。澤田チーフエコノミストは、この背景には、経済の主体が農業セクターから既製服製造や医薬品製造などの輸出産業を中心とする非農業セクターに移行した「構造転換」があり、それを可能にしたのは、教育の拡充やマイクロファイナンスの浸透によってもたらされた女性のエンパワーメントをはじめとする数々の要因であると指摘しました。例えば、MFIsを利用した人々が女性の教育などの人材育成に投資するようになったことで女性の経済活動への参加が進展し、女性が重要な担い手となって既製服産業が活性化しました。さらに橋梁などのインフラや住環境が改善されたおかげで、人々の幸福度も向上していることを紹介しました。また、今後はこの成長を維持しながら、都市化による人口集中、自然災害や環境汚染、ガバナンスや政治的安定といったリスクへの対処が課題だと述べました。その対応策として、開発に対する政府のより積極的な関与、起業を推進する政策、インフラ整備への投資などが求められると締めくくりました。

ADBバングラデシュのマンモハン・パーカッシュ事務所長(左)とJICAの原昌平南アジア部長

JICAの原昌平南アジア部長は、経済成長の加速と社会の脆弱性の克服という戦略の下に行われているバングラデシュでのJICAの取り組みを紹介。同国でのJICAの活動は増加傾向にあり、ベンガル湾産業成長地帯構想における発電所や港湾建設、ダッカでの都市鉄道といったインフラ開発のほか、投資環境整備や輸出促進に係る支援にも努めていることを説明しました。

ADBバングラデシュのマンモハン・パーカッシュ事務所長は、若年層人口が多く、安定した成長を維持しているバングラデシュを「機会に富んだ国」と評価。同国に対し、ADBは1973年からこれまでに200億ドル以上の融資を行い、現在は発電所や鉄道、橋梁といったインフラ開発や人材育成、農村開発などの分野で51のプロジェクトを実施しており、今後は2030年に向けた戦略を掲げ、より包括的で持続的な成長を目指すと述べました。

会場からは、開発による環境へのリスクや格差の問題、マイクロファイナンスの課題、発展に向けどの分野における起業が有望か、バングラデシュと周辺国との経済関係といった質問が寄せられ、活発な議論が交わされました。

最後に閉会のあいさつとして、ADBの松尾隆駐日代表が「この研究成果はJICAやADBにとっても非常に重要。日本とバングラデシュは長年良い関係を築いてきており、本書から得た学びを今後の戦略に生かしたい」と述べ、セミナーを締めくくりました。

その他資料

関連動画

「Economic and Social Development of Bangladesh: Miracle and Challenges」
(澤田康幸ADBチーフエコノミスト)

「バングラデシュの現状およびJICAの活動」
(原昌平JICA南アジア部長) 

「ADB’s strategy for operations in Bangladesh to achieve higher inclusive and sustainable economic growth」
(マンモハン・パーカッシュADBバングラデシュ事務所長) 

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