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インクルーシブな開発に向けてボランティア事業は何ができるか?国際ボランティア会議2018で研究成果を発信—大貫研究員ら

2018年12月4日

2018年10月28~31日に、カナダのモントリオールで国際ボランティア会議(International Volunteer Cooperation Organisations' Conference: IVCO)2018が開催され、JICA 研究所から大貫真友子研究員と坂巻絵吏子職員が参加しました。

IVCOは国際ボランティアネットワーク(Forum)が主催する年に一度の会議で、各国の国際ボランティア事業団体が一堂に会して知見や事例を共有する場。今年は「Women and youth: bridging the gap — Volunteering for inclusive development(女性と若者:格差を埋めるために~インクルーシブな開発のためのボランティア事業)」をテーマに掲げ、29カ国から約200人が参加し、ボランティア事業の包摂性、主に女性と若者が不平等を乗り越えるためにボランティア事業ができることについて議論しました。

モデレーターを務めたJICA 研究所の坂巻絵吏子職員(右端)

29日には、サブテーマ「From Policies to Practice(政策から実務へ)」のもとでさまざまなセッションやパネルディスカッションが行われ、坂巻職員がダイアログセッション2 「Inclusive Development: Where are we at?(女性と若者のための包摂的開発:我々はどこにいるのか)」でモデレーターを務めました。同セッションでは「intersectionality(交差性)」をキーワードに議論され、個人を形成する要素は性別や年齢の他、言語や民族、文化などが複雑に重なりあっているため、その個人が陥っている問題解決には要素を個別に解決するだけでは不十分で、状況を総合的に考慮する重要性がポイントとして挙げられました。

また31日には、サブテーマ「Communicating Impacts Strategically(戦略的なインパクトの伝達)」のもと、大貫研究員がダイアログセッション13「Communicating Impacts via Civil Engagement(社会貢献活動を通じたボランティアのインパクトの伝達)」に登壇。大貫研究員は、「Do Returned International Volunteers Continue to Volunteer? If So, Who Is Doing More What? : A Case of Japan(帰国ボランティアはボランティアを続けるか?もしそうならどのような人が何をしているのか:日本のケース)」と題し、JICA研究所の研究プロジェクト「国際ボランティアが途上国にもたらす変化とグローバル市民社会の形成」の成果を発表しました。国際ボランティアが開発課題の解決に果たす役割や帰国後に国内で果たす役割に注目が集まっていることを受け、同研究プロジェクトは、アジアを代表する国際ボランティア事業であるJICAボランティアが現地にもたらすインパクトとその日本国内への社会還元の在り方を考察する目的で実施されています。

JICA 研究所の大貫真友子研究員がボランティア経験者の社会貢献活動について発表

大貫研究員は同研究の一環として、帰国後約10年たった元青年海外協力隊と元シニアボランティア計228人が、過去1年間に従事したボランティア活動の分野や日数などについて実施したアンケート調査を基に分析しました。それを一般市民のボランティア動向と比較した結果、調査対象者の方がより活発にボランティア活動を続けており、特に女性は環境分野、男性は地域コミュニティー分野の参加が盛んであったことを紹介しました。さらに、一般的にボランティア活動が利他主義的な動機に寄るものだと考えられているのに対して、日本においては、相互互恵や恩返しの精神が根付いていることや、むしろ自己の成長や刺激、楽しみなどを見いだしている人に国際協力に関連したボランティアを続ける傾向があることなどを説明。国際ボランティア活動の広がりを考察する上では、そうした変化を前向きに捉える価値観や、“与えることで得られるもの”への期待に着目する必要があると強調しました。会場からは、ボランティア経験者が社会貢献活動を続けるためのJICAの取り組みや、この研究を基にどのような政策提言をするのかといった質問が寄せられました。

さらに、31日のダイアログセッション14「Communicating Impacts by the Multiplication of Inclusive Practices(インクルーシブな活動の増加によるインパクトの伝達)」では、JICA青年海外協力隊事務局から田中章久企画業務課長が登壇し、協力隊がセネガルの小学校で現地流にアレンジした「運動会」を開催することで女子児童や障害児などの参加を効果的に促した事例を紹介しました。

IVCOへの参加を通じて、各国の国際ボランティア事業関係者とインクルーシブな開発に向けた課題を共有するとともに、日本の知見を発信する機会となりました。

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