グローバル・シンクタンク・サミット2018でシンクタンクが果たす役割について議論—大野所長

2018.12.05

2018年11月7~9日、ベルギーの首都ブリュッセルで開催されたグローバル・シンクタンク・サミット(Global Think Tank Summit: GTTS)2018に、JICA研究所の大野泉所長が参加しました。

GTTSは、米国ペンシルバニア大学ローダー研究所の「シンクタンクと市民社会プログラム(TTCSP)」のジェームズ・マクガン教授のイニシアチブにより2014年から開催され、世界中のシンクタンクが集う年次会合。JICA研究所は2016年から参加しています。今年のテーマは、「Think Tanks: A Bridge over Troubled Waters and Turbulent Times(荒波と激動の時代における懸け橋)」。ポピュリズム・自国第一主義・保護貿易が台頭しつつある一方、経済格差や気候変動、移民・難民危機といった国境を超えた課題解決に国際協調が求められている中、51カ国から120のシンクタンクが参加し、シンクタンクの役割について議論しました。

大野所長は、7日の公開セッション「How can globalisation and global competition be managed fairly?(グローバリゼーションとグローバル競争を公正にするには何をすべきか?)」に登壇。ドイツのベルテルスマン財団のアート・デゲウス会長の司会のもと、アフリカ経済改革研究センター(ACET)、中国社会科学院(CASS)、米国のピーターソン研究所、英国の経済問題研究所、在スイス・マッキンゼー・グローバル・インスティテュートからの参加者らと意見交換を行いました。

公開セッションに登壇したJICA研究所の大野泉所長(中央)

大野所長は国際協調の重要性を強調し、「2030アジェンダが掲げる持続的かつインクルーシブな世界の実現を目指し、欧米へのキャッチアップを果たした日本の援助機関の研究部門として、JICA研究所は開発途上国の具体的な課題解決に資する実践的な知見を提供していきたい」と発言。このセッションを通じて、グローバリゼーションは「ゼロサムゲーム」ではなく正・負の両面があることや、公正なグローバリゼーション実現のためには「開発コンポーネント」が重要であること(例えば、食品輸出においてアフリカ諸国がEU基準を満たすことは難しく、能力強化が必要)について意見が一致しました。

8日には、6カ国のシンクタンク代表が各組織の取り組みを紹介するThink Tank CEOパネルが開催され、登壇した大野所長は「現在の世界が直面する課題の分析・政策提言を行うことは有用だが、課題を生み出している原因、例えばポピュリズムの背景にある格差問題、難民危機の根源にある紛争問題、地球温暖化などの解決に向けた知的貢献も重要。途上国の現場に拠点を持ち、開発課題の解決のための実践的知見を提供できるJICA研究所としては、ここに比較優位を見いだし、注力している」と強調しました。

世界が複雑で困難かつ多様な問題に直面している時代に、中立性を貫きながら政策分析・提言を行うシンクタンクの役割の重要性や、GTTSのようなシンクタンク・コミュニティーを持続していく意義を再確認する場となりました。

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