世銀とGIZ主催の国際会議で開発協力のあり方を議論—伏見研究所次長が参加

2019.01.30

2019年1月17日、18日の2日間にわたり、国際会議「Global Delivery Initiative (GDI) and Doing Development Differently (DDD) Network Conference—Responding Differently to the Changing Dimensions of the Development」 がドイツのベルリンで開催されました。GDIは世界銀行(世銀)がリードする国際開発コミュニティのナレッジプラットフォームで、多くの開発協力機関、NGO、そして開発研究機関が参加。「何がうまくいくのか(What works?)、なぜ(Why?)、どのように(How?)」に着目して、その体系的分析を試み、結果を共有しています。具体的には、分野を超えて存在する開発プロジェクトの実施上の課題("delivery challenge")を類型化して課題への対処方法に関する知見を整理し、当該課題にかかる人的ネットワークの情報と併せて実務家に提供する活動を行っています。また、これにより開発協力の実務者による有益な知見や人材へのタイムリーなアクセスを可能にし、事業の実施改善につなげることも可能としています。

本会議はGDIの共同議長である世銀とドイツ国際協力公社(GIZ)が主催しました。本会議には、「従来の開発協力が途上国政府の機能改善につながっていないのは、先進国のベストプラクティスの移植を試み、また計画から逸脱しないよう厳しく監理しているからであり、やり方を変える必要がある」という認識を持つ国際機関や政府機関、二国間開発協力実施機関、シンクタンク、大学、NGO・NPO・コンサルタントの開発実務者約100名が集まり、JICA研究所からは伏見勝利研究所次長が参加しました。

基調講演やパネルディスカッションなど6つの全体セッションと、計15の分科会セッションにより構成され、伏見研究所次長はセッション「Effective Adaption: Project Work and Strategic Decision Making」の議長を務め、分科会ではプレゼンテーションを行いました。

分科会では、伏見研究所次長の著作である開発協力文献レビュー「The Puzzle of the Universal Utilization of the Logical Framework Approach: An Explanation using the Sociological New Institutional Perspective」の要約から、「開発機関が柔軟な事業管理を主流化できないのは、自国の関係者への説明責任を途上国での援助効果よりも優先するからだ」という仮説を、社会学の新制度派組織論の3つの概念(組織を取り巻く環境が組織の活動を決定する(Rational institutional myths)、実質を変更せずに形式と実態がかい離する現象(Decoupling)、組織が同じ環境にある場合に似通ってくるという考え(Institutional isomorphism))を用いて解説しました。そして、世界中の開発協力機関がログフレームを使い続けているのは、さまざまな環境的プレッシャーによるものであり、打開するためには、柔軟なアプローチを採用すべきという環境をエビデンスをもとにつくっていくしかないと主張しました。さらに、JICA研究所では柔軟なアプローチの有効性を示す実証研究と事例研究の立ち上げを考えているので、関心があればぜひコンタクトしてほしいと参加者に呼びかけました。

分科会で発表する伏見研究所次長

本会議で主張された開発協力のあり方は、従来から日本が重視する「開発途上国の自助努力を引き出し、解決策を共創するアプローチ」と共鳴するもので、JICA研究所では引き続き積極的に日本型ともいえる開発アプローチの有効性を発信していく予定です。

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