G20大阪サミットからTICAD7へ—南アフリカでのシンポジウムに中田チーフエコノミストが参加

2019.07.31

2019年は6月のG20大阪サミットに続き、8月には第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催されるという、日本とアフリカ開発にとっては極めて重要な年であり、世界からの注目も高まっています。この特別な年におけるアフリカ開発のプライオリティを幅広い参加者で討議することを目的に、南アフリカ共和国(以下、南ア)の外交政策シンクタンクInstitute for Global Dialogue(IGD)と南アフリカ大学の共催によるシンポジウム「The G20 Osaka Summit: Japan’s delicate balancing of diplomacy-led and development-led engagement」が、7月24日に南アのプレトリアで開催され、JICAから中田亮輔チーフエコノミストが参加しました。

G20大阪サミットでは持続可能な開発目標(SDGs)、貿易・投資、デジタル課税、気候変動、人口動態を含むさまざまな政策課題が議論され、これらはいずれも途上国の開発における重要課題ともなっています。しかし先進国と途上国との間では、直面する具体的な課題・対策に差があるのも事実です。米中貿易摩擦問題を含め国際的な対立が深刻化する中、いかにG20諸国間でアフリカ開発問題について合意し、そしてTICAD7でのイニシアティブにつなげていくか、日本の外交努力にアフリカ諸国の多くが注目しています。

この観点から、G20大阪サミットの政策的議論とTICAD7における優先課題を連続した枠組みとして議論するため、日本とアフリカ双方からパネリストを招いての本シンポジウムに、丸山則夫在南アフリカ共和国特命全権大使、エリザベス・シドロポロス南アフリカ国際問題研究所長、ジョージ・カララチ アフリカ開発銀行リードエコノミスト、フェイス・マベラIGDシニア・リサーチャーと共に、中田チーフエコノミストが登壇しました。(注:中田チーフエコノミスト、シドロポロス所長、カララチ リードエコノミスト、マベラ シニア・リサーチャーは、いずれもT20メンバーです。)

丸山大使からは、技術革新がG20大阪サミットの横断的な論点の一つとなったことが挙げられました。またG20参加各国間の差異を強調するのではなく、むしろ共通する問題にフォーカスすることで、G20として実行可能な政策につき合意したことなど、包括的な説明がありました。シドロポロス所長はデジタル貿易に関する大阪トラックの開始合意、国際課税問題での協議前進、世界貿易機関(WTO)改革推進での合意などを成果として挙げ、一方でアフリカの課題解決の主流化に向け、国際的政策協議でのアフリカのプレゼンス向上の必要性を呼び掛けました。またカララチ リードエコノミストは、アフリカ諸国間が直面する課題や各国の置かれた状況が大きく異なる中、貿易統合、社会的包摂、インフラ・ファイナンスなどの共通テーマについて論じました。

中田チーフエコノミストは、G20のさまざまな政策議論の中で、特にTICAD7にもつながる開発問題として「質の高いインフラ」と「債務持続性」の2点を、SDGs達成に向けた表裏一体の課題として論じました。ミレニアム開発目標(MDGs)成功の原動力となった東アジア地域では、これ以上の指標改善の余地が限られる中、SDGs達成のためにはアフリカの開発成果が必須としたうえで、その膨大な開発資金ニーズをマクロ経済の不安定化を招かずに調達するための、高い経済成長の維持、国内資源動員、民間資金動員の推進について言及。さらに、その支出効果を向上させるためのインフラ投資の質の向上、支出対象に応じた最適な資金ソースの選択の重要性を論じました。

参加者からの質問に応じる中田亮輔チーフエコノミスト(左端)

マベラ シニア・リサーチャーによる議論のとりまとめ後、参加者からは、さまざまな開発計画のモニタリング評価の重要性、政府・シンクタンク・市民社会の間での政策的議論の連携促進、多くの政策課題が林立する中での優先付けなど、さまざまな問題が提起され、パネリストとの討議が行われました。

TICAD7においても、さまざまな政策課題について多くのサイドイベントが開催され、アフリカ諸国を含む多くの開発関係者、市民社会、学識経験者などの参加により、活発な議論が行われる予定です。このようなプロセスを通じて、アフリカ開発における優先課題、新たなアプローチなどが精査され、開発効果の向上につながっていくことが期待されます。

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