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TICAD7サイドイベントでアフリカ政府・民間ビジネス・国際機関の幅広い視点から開発資金ニーズとマクロ経済安定性確保に向けて必要な政策を議論

2019年9月6日

会場には多くの参加者が集まり、アフリカへの関心の高さをうかがわせた

JICA研究所は2019年8月30日、第7回アフリカ開発会議(TICAD7、8月28~30日に横浜にて開催)のサイドイベントとして、「アフリカにおけるSDGs達成に向けた資金ニーズの充足と財政・債務持続性の確保」を開催しました。

多くのアフリカ諸国では、債務削減と高い経済成長により、2000年代には債務水準の安定化が見られましたが、近年、国際経済環境の不透明感、一次産品価格の下落とともに、その悪化傾向が見られます。また非伝統的ドナーや商業債権者からの借入増により、債務構成も大きく変化しており、各国の債務管理はさらに困難なものとなっています。アフリカ諸国と国際社会は協力して、かつてのような債務危機の再発を防ぎつつ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた資金需要を満たすことが重要な課題となっています。

同イベントでは、こうした背景を踏まえ、アフリカ諸国の政策立案者、民間ビジネス界、国際機関のそれぞれ異なる立場から、財政・債務持続性を維持しつつ、膨大な開発資金ニーズを満たすための主要政策につき、その実効性、実施上の実務的課題、非伝統的貸し手の関与のあり方などを議論しました。

まず中田亮輔JICAチーフエコノミストがイベントの目的を紹介した後、議論の背景としてアフリカ諸国の財政資金ニーズと債務状況などにつき、概観を提示しました。この中で、アフリカ諸国の債務水準が悪化傾向にある中、調達資金の金利水準には国ごとに大きな差があり、非伝統的な貸し手からの借入を反映して一部の国での調達金利が上昇している可能性があること、また、アフリカではアジア地域に比べて債務蓄積が必ずしも経済成長を伴っていない国が多いことなどを示し、マクロ経済の不安定化を引き起こさずに膨大な資金ニーズを満たすため、2019年のG20大阪サミットに際してとりまとめたThink 20(T20)の政策提言の概要を紹介しました。

これを受けてEmerging Markets Forum CEOのHarinder Kohli氏が、現在実施中のアフリカ諸国における非パリクラブ加盟国による融資についての調査の概要を紹介しました。同調査では、アフリカ6カ国における非パリクラブ諸国からの借入で資金が調達された事業に対し、事業実施過程や開発効果などに関する調査を行っています。その結果、各事業の開発効果、経済面への影響などについて一定のプラスの効果は見られたものの、事業選定・実施過程の不透明さ、質的な不十分さなどの問題があるとし、「質の高いインフラ」に関するG20原則に則った事業プロセスの重要性を指摘しました。

さまざまな視点から議論が交わされたパネルディスカッション

続いてアフリカ2カ国、民間ビジネス界、国際機関からの登壇者を得て、SDGs達成の見通し、開発資金ニーズ、債務持続性に向けた政策についてパネルディスカッションが行われました。

コートジボワールのニアレ・カバ計画・開発大臣は、内戦を経た同国において、国内格差の是正や若年層の教育および雇用、直接投資を促進するためのインフラ整備のために膨大な資金ギャップが存在することを確認した上で、SDGs達成のための国家戦略の策定により開発機関からのみならず国内からの資金動員も可能となったとし、今後はさらに金融市場からの資金調達の促進、インフォーマルセクターの取り込み、プロジェクトの内容の精査による資金配分の改善が持続的な成長のための鍵となると指摘しました。

セネガルのアマドゥ・オット経済・計画・協力大臣は、SDGs達成と債務持続性の維持に向けて、特に民間資金の導入を積極的に進める政府方針を示し、これまで各現業官庁で個別に実施計画を定めていたPPP事業を、計画省で統括する行政再編を行ったこと、経済的な収益のある事業への公的資金の投入を最小限に抑え、ドナー資金も民間資金のレバレッジに集中的に活用する政策などを説明しました。

住友商事株式会社の高鳥俊一経済協力・官民連携推進室長は、アフリカの資源部門や電力部門を中心に積極的な事業展開を進め、同社がアフリカを有望な事業実施先と見ていることを示した上で、投資環境整備、マクロ経済の安定、ガバナンス体制、確実な契約履行などを投資決定の上での重要条件であるとしました。特に債務危機が生じると、民間事業実施上の資金調達も困難になるとし、債権国・債務国を巻き込み、IMF、世界銀行、アフリカ開発銀行が中心となり債権・債務管理の枠組みを作ることの重要性を指摘しました。

IMFのDominique Desruelleアフリカ局次長は、債務持続性と開発資金ニーズのバランスを重視するこのイベントの趣旨に強く賛同した上で、近年、債務持続性分析(Debt Sustainability Analysis: DSA)の結果が高リスクと分類されるアフリカ諸国が増えている点に懸念を示し、SDGs達成に向けて国内資金調達、開発支出効率、債務の透明性、民間資金の活用などの多岐にわたる方策の重要性を指摘。また非伝統的な貸し手の債務透明性の確保に向け、IMFとして個々の貸し手国との対話を強化している状況についても説明しました。

アフリカ開発銀行のGabriel Negatu東アフリカ地域総局長は、アフリカの開発資金調達は不十分で、現状ではSDGs達成に向けて着実に前進しているとは言いがたいとし、特に国際的な資金調達を進める上での革新的な取り組みの必要性を主張しました。またアフリカ開発における民間ビジネス参加を推進する上で、アフリカ開発銀行として特に重視する視点として、開発戦略との整合性、事業の収益性、開発成果、資金の追加性(additionality)などの点を挙げました。

最後にモデレーターを務めた森睦也JICA上級審議役が、債務持続性のみに注視するのではなく、開発資金の調達との適切なバランスをとるべきであること、しかし民間資金の導入に向けても債務持続性の確保は重要であること、G20およびTICADで指摘された債務の透明性確保に向け、G20間での緊密な協力が必要であることにつき、共通理解が得られたとして議論を集約しました。また日本として、国際機関と協力し、今後もアフリカ諸国の債務管理能力強化、開発資金調達への協力を強化していくことなどを述べました。

今回のパネルディスカッションにおいて、借入側のアフリカ諸国、投資事業を行う民間ビジネス界、開発戦略・マクロ経済政策を支援する国際機関という異なった立場のパネリストが一堂に会し、マクロ経済の不安定を生じさせることなく、借入を含むSDGs達成のための資金調達を進める上で必要な政策について、共通理解を持つべく対話ができたことは大きな成果であったといえます。この議論を踏まえて、2030年までのSDGs達成の支援に向けて、今後もJICAとして戦略的取り組みをさらに進めていきます。

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