ドイツでの第19回GDN年次総会で「労働者・管理職・生産性—途上国におけるカイゼン活動」についての分科会をJICA研究所が主催

2019.10.29

開発途上国の研究能力の開発とネットワーキングを目的としたグローバル・ディベロップメント・ネットワーク(Global Development Network:GDN)の第19回年次総会が、2019年10月23~25日にドイツのボンで開催されました。「持続可能な開発のための知識:研究と政策の連携(Knowledge for Sustainable Development: the Research-Policy Nexus)」がテーマに掲げられ、約100カ国から約500人が集いました。

JICA研究所からは大野泉研究所長らが参加し、24日には途上国におけるカイゼン活動の事例についての分科会で、40人を超える参加者と活発な討論を行いました。この分科会で討論されたカイゼン事例は、JICA研究所とGDNによる共同研究で取り上げたもので、途上国におけるカイゼン活動の有効性を10カ国の事例を踏まえて分析しています。

大野研究所長がモデレーターを務め、まずブルッキングス研究所のジョン・ペイジ上席研究員が研究成果の概要について基調講演を行い、「カイゼンはイノベーションのための投入であり、企業の新技術の取得や実験を可能にする。その成功には、労働者の役割が重要」と指摘しました。

JICA研究所が主催した分科会で、10カ国でのカイゼン事例について議論

続いて行われたパネル討論では、同研究メンバーである神公明JICA専任参事、JICAのカウンターパートとしてカイゼンを普及しているガーナ小企業庁のコシ・ヤンキー理事長、生産性向上活動で長い実績を持つマレーシア生産性機構のロスミ・アブドゥラ局長、アフリカにおける産業開発を研究しているゲーテ大学のコーネリア・ストルツ教授が参加し、研究者と実務者がデータを踏まえた議論を展開しました。参加者との質疑応答も活発で、会の終了後も意見交換が続きました。

この分科会を通して、①途上国においてカイゼンは企業や組織の生産性を高めるための有望な手段であり、幅広く活用できる、②普及にあたっては、各国の状況を踏まえた適応策や、政府の主導的役割が重要、③効果の把握のためのデータ取得について、難しさを克服するための研究が今後も必要、といった主なメッセージが共有されました。なお、同共同研究の成果は『Workers, Managers, Productivity – Kaizen in Developing Countries』と題したオープンアクセス書籍として、2019年内に英国パルグレイブ・マクミラン社より出版される予定です。

翌25日に大野研究所長は、応募者の中から選ばれた若手研究者に対する研究支援プログラムである国際開発日本賞を授与しました。同賞は、GDNが行う途上国の研究者育成プログラムを日本政府が支援しているもので、毎年、年次総会で若手研究者に授与されます。これまで約9,000人の若手研究者が賞に応募し、約200人が受賞しています。

2019年は、32の応募者から選ばれた最終候補者3人が総会初日に発表を行い、最終日の全体会合で1~3位が発表されました。授賞式で大野研究所長は「開発協力によって蓄積された知識や情報を、途上国の実践的な開発政策やその実施に役立てていきたい。現場で変化をつくることが私たちのモットー」とスピーチを行い、最優秀者に選ばれたフィリピンのエマニエル・ユジコ氏(「フィリピン公衆衛生政策における根拠に基づく研究の利用実態に関する分析」)に日本賞を授与しました。

JICA研究所の大野泉研究所長(右)がフィリピンのエマニエル・ユジコ氏に国際開発日本賞を授与

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