グローバルヘルス合同大会2020大阪でコロナに立ち向かう新たな連携の重要性を議論—牧本主席研究員

2020.12.20

2020年11月1~3日の3日間に、第61回日本熱帯医学会大会、第35回日本国際保健医療学会学術大会、第24回日本渡航医学会学術集会、第5回国際臨床医学会学術集会の合同大会として、「グローバルヘルス合同大会 2020大阪」がオンラインで開催されました。2日目の「グローバルヘルスにおける新型コロナウイルス対策と国際協力—新たな日本の戦略的パートナーシップに向けて—」と題したシンポジウムでは、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の牧本小枝主席研究員が座長を務めました。このシンポジウムは、JICA緒方研究所のほか、JICA人間開発部、健康・医療の国際展開を推進する一般財団法人Medical Excellence JAPAN(MEJ)、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)に関する研究・開発を後押しする国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、東京女子医科大学が、コロナ危機下の活動やグローバルヘルスへの貢献、直面する課題などについて報告したもので、100人を超える学会員がオンラインで参加しました。

シンポジウムで座長を務めたJICA緒方研究所の牧本小枝主席研究員

まず、牧本主席研究員が、世界各国のコロナの感染状況、コロナによる直接的な健康や人々の生活、経済への影響、国際社会のこれまでの対応を概観した上で、JICAが2020年5月に在外拠点などの海外ネットワークを通じて収集した情報をもとに、開発途上国のコロナへの初動対応を紹介。途上国が自国における過去の感染症流行時の教訓のほか、先進国の情報や国際機関の助言などを活用し、欧米のように感染爆発を起こさなかった国もあったことや、限られた国内資源をフル活用して対応したことなどを説明しました。そして、コロナのパンデミックで社会の脆弱性が明らかになったからこそ、日本が国際社会の一員として積極的に貢献していくにはどうすべきか問題提起しました。

続いてJICA人間開発部新型コロナウイルス感染症対策協力推進室の瀧澤郁雄室長は、コロナによる開発協力への影響やコロナ対応支援を実施する上での課題をJICAの視点から振り返りました。さらに、コロナ禍に立ち上げたJICAの戦略と命を守る協力の実績のほか、日本が支援してきたベトナムのチョーライ・バックマイ・フエ病院や国立衛生疫学研究所、ガーナの野口記念医学研究所、民間企業などとの連携を紹介し、日本の先駆的技術や知見の活用、国際的な協調枠組みといった新しいパートナーシップを模索していることなどを説明しました。

左上から時計回りに、JICAの瀧澤郁雄室長、AMEDの野田正彦国際戦略推進部長、東京女子医科大学の杉下智彦教授、MEJの秋山稔理事

次に、MEJの秋山稔理事が「with/after COVID-19における医療の国際展開の在り方について」と題して発表し、コロナの影響で国境を超えた移動や対面での活動が難しくなった中、新たな取り組みとしてウェブセミナーなどを活用した活動にシフトしていることなどを説明。2020年9月には中央アジア諸国の専門家会議を開催したことも踏まえ、アジア諸国からの期待として、日本には確かな医療技術とデータ、最新の科学に裏打ちされた経験の共有、それらに付随するサービスや技術の提供が求められていると述べました。

AMEDの野田正彦国際戦略推進部長は、AMEDがコロナ対策に関連して、分子疫学・病態解明、診断法・検査機器開発、治療法開発、ワクチン開発、コロナ研究を支える基盤、国際連携という分野で進めている多様な研究開発を紹介。また、コロナに関連する研究成果とデータを海外機関や日本の省庁とタイムリーに共有し、国際連携に注力していることなども述べました。

また、東京女子医科大学の杉下智彦教授は、「科学技術と国際協力を通したウイルスとの共存社会を目指して—ニューノーマル社会の新しい脆弱性への挑戦—」と題して発表。経済発展とコロナ感染拡大や死亡率の関連性に触れたほか、アバターやVRなどの新たな科学技術を用いた、新しい国際協力の可能性に言及しました。また、ガーナにおけるJICAの活動を例に、途上国における健康課題に向き合うためには保健や栄養、農業などの多領域を組み合わせた包括的なアプローチが重要であると訴えました。

最後に、JICA緒方研究所の牧本小枝主席研究員がモデレーターを務めたパネルディスカッションが行われ、日本の官民学はどのような戦略的パートナーシップを構築できるのか、途上国におけるワクチン提供に関し日本がどのように貢献することが可能か、より中長期的に将来の感染症が予防可能な強靭な保健システムをどのように構築すべきか、途上国における医療品の供給体制の構築と提供者をいかに特定すべきかなどについて、現場志向・未来志向の議論が展開され、登壇者と参加者が共に考える機会となりました。

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