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危機の時代になぜシンクタンクは重要なのか?JIIA-ADBIパネルディスカッションで議論—高原所長

2021年2月18日

2021年2月5日、日本国際問題研究所(Japan Institute of International Affairs: JIIA)とアジア開発銀行研究所(Asian Development Bank Institute: ADBI)共催のパネルディスカッション「危機の時代において、なぜシンクタンクは重要なのか?」がオンラインで開催されました。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の高原明生所長が、JIIAの佐々江賢一郎理事長、ADBIの園部哲史所長とともに、パネリストとして参加しました。

アジア開発銀行研究所の園部哲史所長はコロナ禍での開発途上国への取り組みを紹介

各パネリストは、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)のパンデミックといった危機の時代にシンクタンクが活動する意義や、シンクタンクが情報をより分かりやすく発信するにはどうしたらいいか、デジタル化が急激に進む中での挑戦などについて発言しました。

まず園部所長は、「ADBIはアジア太平洋の開発途上国が直面する課題を共に勉強するという姿勢で常に臨んでいる。コロナ禍では、経済的打撃を受けているモルディブやタイなどの観光立国への復興策、代替エネルギーなどのグリーンリカバリーの推進、経済支援策などについてエビデンスを提供し、調査分析や情報の共有などを通して各国の政策担当者に役立ててもらえるよう活動している。ただ、ADBIは日本国内ではあまり認知度が高くないので、今後は一般向けの情報発信を積極的に行っていきたい」と述べました。

情報発信をより強化していきたいと話した日本国際問題研究所の佐々江賢一郎理事長

続いて佐々江理事長は、JIIAが米国ペンシルベニア大学シンクタンク市民社会プログラムによる「シンクタンク・オブ・ザ・イヤー2020」を受賞し、全世界のシンクタンクランキングで第8位に選ばれたことにふれ、「今回評価されたのは、ウェブサイトでのタイムリーな発信や大型イベントの開催などを通して対外発信を強化したことが一因。シンクタンクの基本的な役割は中長期的な視点での研究分析と政策提言だが、やや学問的な方向に傾きがちで、得られた知見を世の中に広く分かりやすく発信する努力が重要。コロナや米中問題といった国際情勢など、今の時代に先鋭化している問題に光を当てて人々に考えてもらえるよう、体制を強化していきたい」とコメントしました。

JICA緒方貞子平和開発研究所の高原明生所長はコロナ危機への対応を説明

最後に高原所長は、「コロナ禍という既存の価値観が通じない不確実性に直面し、人々は不安にさいなまれている。With/Postコロナの世界はどうなっていくのか、それにどう向き合って何をすべきなのか、シンクタンクは専門領域を横断する総合的な知見を提供することで人々の不安をやわらげ、試行錯誤の手助けをするのが役割」とし、コロナ危機へのJICA緒方研究所の対応について紹介しました。一つ目は、パンデミックの初期段階に「新型コロナウイルス対策に関する比較・実践的研究会」を立ち上げて途上国でのコロナの現状分析をいち早く行い、強靭な社会保健システムの構築やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現などについて北岡伸一JICA理事長のメッセージを発信したことを挙げました。二つ目の対談シリーズ「ポスト・コロナの世界における国際協力」では国内外の有識者との対話を行い、これまで暗黙のうちに“先進国の価値規範”をモデルとしてきた開発援助のあり方を変革し、コロナ危機に対してレジリエンスを示した途上国から真摯に学んで知恵を共創することがニューノーマルとなるべきとの見解を示しました。三つ目の「ポスト・コロナのアジア経済社会構造ダイナミクスに関する研究会」では、コロナ禍や米中対立の影響は部分的に見られるものの、従来のバリューチェーンの基本構造を変えるほどのインパクトはないとの暫定的な研究成果が得られたことも紹介。さらに高原所長は、「シンクタンクは中長期的な視点に固執することなく、変化する状況を的確に捉えられているか常に自らを省みる謙虚さが必要。JICA緒方研究所は二国間開発援助実施機関に付随するユニークなシンクタンクとして、途上国の“現場”を持つ強みを生かし、政策につなげていきたい」と述べました。

質疑応答では、シンクタンクにおける課題の優先順位のつけ方やシンクタンクと国連の連携、アジアのシンクタンクがより影響力を持つにはどうすべきかといった幅広い質問が参加者から寄せられ、活発な議論が行われました。

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