JICA緒方研究所

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質の高いインフラ開発でジェンダーギャップを削減するには?ウェビナーで議論—山田研究員

2021年5月1日

JICA緒方研究所の山田英嗣研究員は質の高いインフラとジェンダー主流化がどう女性の経済的福祉に有益か発表

2021年3月26日、経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development: OECD)開発センターによる国際女性の日を記念したイニシアチブ「OECD March on Gender」の一環で、同センターの湯浅あゆ美副所長がモデレータ—を務めたウェビナー「DevTalks - Quality for equality? Making quality infrastructure work for gender equality」が開催されました。

質の高いインフラへのアクセスの欠如は、教育や雇用といった多くの機会を女性から奪ってきました。このウェビナーでは、どのようにジェンダー主流化を加速し、インフラ開発にジェンダーへの配慮を組み込むか、またどのように意思決定プロセスへの女性の参画を推進するかについて議論が行われ、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の山田英嗣研究員が参加しました。

まず、アフリカ連合委員会のAfrican Network for Women in Infrastructure(ANWIN)の創設メンバーであるメアリー・チェゲ氏が発表し、経済と道徳という二つの観点からジェンダー平等を促進するための根拠となる統計データを示しました。経済的な観点からは、サハラ以南のアフリカでは今も飲料水にアクセスできない家庭が最大60%にも上り、そのため、この地域の女性たちが無給での水汲みに費やさざるを得ない時間を合計すると一日当たり1,600万時間にもなるとし、仮に女性たちがこの時間を男性と同等に経済活動に費やせば、2025年までに世界のGDPは28兆米ドルも増加すると述べました。一方、道徳の観点からは、20~50年も稼働できる丈夫なインフラをジェンダー配慮のないまま整備すれば、既存のジェンダー不平等を今後数十年単位で増強してしまう点に言及しました。また、法整備や政策立案、計画と設計、入札、建設、稼働、保守点検といったインフラ建設プロジェクトの各段階が、女性の視点も取り入れて適切に設計・実行される必要があると述べました。

山田研究員はケーススタディーとしてデリーメトロ建設プロジェクトを紹介(写真:JICA/久野真一)

続いて山田研究員は、インフラプロジェクトにおいて質の高いインフラとジェンダー主流化がどのように女性の経済的福祉にとって有益か、JICA緒方研究所の研究プロジェクト「インフラ事業のインパクト分析研究に係る案件選定・分析手法検討」の結果に基づき発表。JICAが1990年代から支援してきたインドでの地下鉄(デリーメトロ)建設プロジェクトのケーススタディーを引用し、地下鉄ができたことにより駅近隣で女性の就労が進んだことを示しました。また、ペルーのバス高速輸送システムやリマメトロなど、女性の雇用機会と経済的福祉を改善した他のインフラプロジェクトの研究結果も、デリーメトロの研究で得られた定量的な結果を支持するものとなったと述べました。さらに、ベトナム・ホーチミン市での女性建設作業員を増やすためのクオーター制の導入やデリーメトロでの性犯罪防止の監視カメラの設置など、ジェンダーの問題に対応した手法を紹介しつつ、こうしたインフラプロジェクトについての研究実例が非常に少ないことにも言及。学術的根拠に裏付けられたより良いインフラ政策を生み出すためには、こうした研究が進んでいないことが大きな障壁の一つになっているとし、より正確な根拠と柔軟なプロジェクト設計が必要であり、それによりプロジェクトを通して実験しつつ、どのような介入がどのような結果を生むのかの評価が可能になる、と強調しました。

最後に、OECD開発センターの経済学者ピエール・ボワセソン氏が発表し、インフラが男性によって男性のニーズに合わせて設計され、歴史的にインフラ設計は男性が作った規範に従ってきたことを理解する必要があると述べました。また、多くの開発途上国の学校にトイレなどの衛生施設がないため、生理中の女子生徒が学校に行けず、教育の重大な障壁になっていることを挙げ、これは校舎の設計上の欠陥による問題だと批判しました。したがって、衛生施設や水道施設といった基本的なインフラの改善は、社会生活に多大な影響を与え、男性と女性の家庭内の役割を定義する伝統的な社会規範の変化までもたらす可能性があるとし、そのためには、今後数年のうちに途上国にとって大きなチャンスとなる経済のデジタル化を活用する必要性や、女性が情報通信技術(ICT)インフラの恩恵を確実に受けられるようにするための技術開発の重要性を強調しました。さらに、STEM(科学・技術・工学・数学)分野に携わる女性が非常に少ないことから、デジタルインフラを改善して経済の転換を図っていくには、同分野への女性の参画を阻んでいる根本的な規範を変える施策が必要と主張しました。

発表後には、ジェンダー平等を向上させるためのより具体的なアイデアを示しながら活発な意見交換が行われました。

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