コロナパンデミックの世界で日本とオーストラリアが共にできることとは?高原所長らがシンポジウムで議論

2021.08.30

2021年7月15日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の高原明生所長と大野泉シニア・リサーチ・アドバイザー(政策研究大学院大学教授)が、アデレード大学ストレットン研究所主催のオンラインシンポジウム「Foreign Aid Policy: Japan-Australia Cooperation in a COVID World」に参加しました。

同シンポジウムは、アデレード大学名誉教授も務めるJICA緒方研究所のプルネンドラ・ジェイン客員研究員の開会あいさつでスタート。同氏は、「インド太平洋の主要2ヵ国として日本とオーストラリアが協力し、共に何ができるのか、特に現在のパンデミックの観点から保健医療セクターで何ができるのかを議論したい」と述べました。

JICA緒方研究所のプルネンドラ・ジェイン客員研究員が開会あいさつ

続いてあいさつをした高原所長は、日本の国際協力の概要を説明。日本の国際協力のアプローチを「型破り」と表現し、それは日本が開発を教える教師としてではなく、開発途上国が開発に取り組む上でのパートナーや仲間として国際協力を行ってきたからだとしました。また、日本型の包括的な国際協力のモデルは、ODA、民間セクターの直接投資、日本への輸出という「三位一体の支援」が特徴であること、冷戦後、特に今世紀に入ってより、日本は「人々が恐怖や欠乏から解放され、尊厳を持って生きることができる」という「人間の安全保障」の概念を採用したこと、そして今、アジアとアフリカの結びつきを強め、インド太平洋域の安定と繁栄を促進する「自由で開かれたインド太平洋」という新たなビジョンを広めていることも説明しました。高原所長は、オーストラリアをインド太平洋域における「日本のベストパートナー」と述べ、両国では民主主義の価値観と法の支配が共有されていると発言。さらに、日本がオーストラリアから学べる点は多いとし、例として人間の尊厳に重要な多文化主義や新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)のパンデミックへの対応を挙げました。

日本の国際協力の概要を説明したJICA緒方研究所の高原明生所長

大野シニア・リサーチ・アドバイザーは、セッション1「An Overview of Japan and Australia’s Foreign Aid Policies」に参加し、「Japanese Development Cooperation in a Changing World」と題して発表。日本は援助の受け入れ国と供与国という二重の経験があり、それゆえ開発について独自の視点を持っているとした上で、援助は単なる慈善活動ではなく、援助からの「卒業」を支えるためのものであるべきと述べました。また、日本の開発協力の発展と歴史を説明しつつ、「コロナによる途上国への悪影響、格差の拡大、援助国での財政のひっ迫やナショナリズムの台頭といった激動の時代に私たちは置かれているが、それでも開発協力は重要な役割を担い続ける」と発言。さらに、世界が直面している全ての課題を開発協力によって解決することはできないものの、課題の根本原因に対応し、学びを促し、地域に合わせた解決策を見つけるとともに、連携を通じて社会的信頼を醸成することで、積極的な貢献ができると強調しました。同じ考えを持った太平洋地域の国として、また、長年にわたるパートナーとして、日本とオーストラリアは共通の価値観を抱いており、両国による開発協力がインド太平洋域における持続可能性、包括性、レジリエンスの鍵となると結論付けました。

セッション1で発表した大野泉シニア・リサーチ・アドバイザー

このセッション1に加え、「Japan and Australia: Contribution to Global Health via Development Cooperation Policy」と「Japan-Australia Cooperation in a COVID World: The Case of South Pacific Island Nations」の二つのセッションも開催されました。

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