アジアの高齢者の健康と生活水準において個人・家計データが果たす役割とは?JICA緒方研究所・ADB・ADBIが国際会議を共催

2021.10.25

2021年9月7~9日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)、アジア開発銀行(Asian Development Bank: ADB)、アジア開発銀行研究所(Asian Development Bank Institute: ADBI)は、「アジアの開発途上国における高齢者の健康と生活水準についての国際会議—個人・家計データの役割—」をオンラインで共催しました。

同会議は、アジアの高齢者の健康と生活水準を支えるためにデータが果たす役割を検討するとともに、新型コロナウイルスのパンデミック収束後の高齢者の生活の質の向上を目指し、データ整備の改善に向けた政策提言を目的にしています。会議に先立ってアジアの高齢者の身体的、心理的、社会的、経済的な福祉を扱う未発表の論文を募集し、その中から選出された17本の論文の発表が行われました。

同会議は5つのセッションからなり、9月7日にはJICA緒方研究所の高原明生所長が開会あいさつを行いました。高原所長は会議のテーマを説明した上で、「高齢化社会が抱える課題に対応する有効な方策を計画し、実行するためには、ミクロデータの活用が不可欠」と言及。また、「JICAは、日本自らの経験に基づき、2000年代半ばからアジアの高齢化の問題に取り組んできた。具体的には、タイ、マレーシア、中国といったアジア諸国で、社会保障制度の設計や長期的な介護サービスのための人材育成などの分野で、政策提言や幅広い技術協力を実施している。引き続き、社会保障制度やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの確立を視野に入れた医療制度の強化を通じて、高齢化の問題に取り組んでいく」と述べました。

開会あいさつをしたJICA緒方研究所の高原明生所長

9月8日には、JICA緒方研究所の清水谷諭上席研究員が座長を務めるセッション3A「Social Protection and Safety Net(社会保護とセーフティーネット)」が開催され、4つの論文発表が行われました。これらのテーマには、中国の年金制度改革が労働供給と個人の福祉に与える影響、バングラデシュの極度の貧困層を対象とした現金給付プログラムの実施能力に関する問題、中国の高齢者にとってのさまざまな保険メカニズムの有効性、インドネシアの高齢者に見られる社会福祉事業へのアクセスの不平等が含まれました。発表を受けて清水谷上席研究員は、各論文が政策志向である点を評価。また、いずれの論文もミクロレベルのデータを用いており、そのうちいくつかは中高年世代について体系的に統合されたデータを使っている点について、「国際的に比較可能な形でデータを整備する取り組みの重要性を気付かせてくれた」とコメントしました。

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