開発途上国が直面する気候変動政策の課題とは?COP26サイドイベントで安達上席研究員らが議論

2022.01.18

2021年11月4日、英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)での「ジャパン・パビリオン」サイドイベントとして、「The Challenging Issues of Environment/Climate Change Institution and Policy Under SDGs Regime」がオンラインで開催されました。これは、JICA、地球環境戦略研究機関(IGES)、桜美林大学、法政大学、海外環境協力センターが共催したものです。

このサイドイベントに参加したJICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の安達一郎上席研究員は、主査を務める研究プロジェクト「SDGs下における環境/気候変動制度・政策の発展に向けての実証研究」の概要と現在までの進展を報告しました。2019年から実施している同研究プロジェクトでは、環境/気候変動に対する新興国の政策を研究しています。安達上席研究員は同研究プロジェクトのアプローチとして、一連の事例分析を用いて対象国の取り組みを精査し、環境/気候変動制度・政策を進める上での課題を特定していることを説明。「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)やパリ協定の履行は、開発途上国自らの取り組みにかかっているものの、実務上の課題や困難が見られる」と強調し、本研究の重要性を説明しました。

研究プロジェクトについて報告したJICA緒方研究所の安達一郎上席研究員

次にJICAの川西正人国際協力専門員が、国家温室効果ガスインベントリに関するJICAの技術協力プロジェクトで得られた教訓を共有しました。技術協力がどのように途上国での内発的で長期的なキャパシティー・ディベロップメントを引き起こし得るか、その道筋と条件についてインドネシアの事例を取り上げて解説。同国では、かつてインベントリの算定業務を外部専門家に委託していましたが、現在では環境林業省の内部人材により、その業務を完結しています。同国の長期的なキャパシティー・ディベロップメントの過程をたどり、これに対しJICAの技術協力がどのように触媒効果を生んだのかを説明しました。

インドネシアの事例を紹介したJICAの川西正人国際協力専門員

「NDC(Nationally Determined Contributions)」と呼ばれる気候変動対策計画の実施を支援するベトナムでの技術協力プロジェクトでチーフアドバイザーを務める福田幸司専門家は、都市レベルの気候変動行動計画(Climate Change Action Plans: CCAP)を用いて、同じ計画であっても都市間で履行や進捗に乖離が生じる点について、分析結果を紹介。一連の結果は、ハイフォン市とホーチミン市の計画実施をケーススタディーとして、主な影響因子を分析して得られたものです。福田専門家は、CCAPの履行率と、計画承認段階での施策ごとの予算確保の目途を含めた計画策定の熟度という2点において、両市には違いがあったことを示しました。また、分析した6指標のうち、1)CCAPに盛り込まれた施策案の種類・性質(投資予算、環境予算の予算区分)、2)都市の首長の取り組みへのコミットメント、3)都市の優先開発課題を達成する手段としてCCAPを主流化させ、調整する地方自治体の職員の行政能力が、履行に影響を与える因子として特定されているとしました。こうした成果に基づき、福田専門家は、計画と履行のギャップを埋めるためにでき得る国際支援の具体的な取り組みや方向性についても言及しました。

ベトナムでの技術協力プロジェクトについて分析結果を発表した福田幸司専門家

最後に質疑応答が行われ、「アフリカ諸国を対象とした温室効果ガスインベントリに関するキャパシティー・ディベロップメントの協力事例はあるか」といった質問や意見に登壇者らが回答しました。気候変動対策の進展に向けて政府の戦略をうまく計画化し、実行していくために、どのように関係省庁のキャパシティー・ディベロップメントを促進していくか、今回の議論を通じて多くの実践的な提案がなされました。

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