HAPIC2022で高原研究所長が人間の安全保障の重要性を強調

2022.04.19

2022年2月14日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の高原明生研究所長は、日本の国際協力NGOのネットワーク組織である国際協力NGOセンター(JANIC)が主催したオンラインイベント「HAPIC2022」に参加しました。

HAPICはグローバルな社会課題解決について考えるカンファレンスで、2022年で3回目。高原研究所長は、JANICの若林秀樹事務局長がモデレーターを務めたオープニングセッション「Redesign-米中時代における日本外交と国際協力~危機に晒されている民主主義を守り、持続可能な社会に向けた日本の役割とは~」に、河野太郎衆議院議員、新外交イニシアティブ(ND)の猿田佐世代表、JANICの本木恵介理事長と共に参加し、意見を交わしました。

まず各登壇者からの発表が行われ、河野議員からは、米中対立の新冷戦時代ともいえる現在の国際社会において、日本が軍事力ではなく、政府、産業界、NGOなどが連携し、また日本文化などの魅力も活かすことで総合力を発揮し、「オールジャパン」で役割を果たしていく必要性が指摘されました。

続いて高原研究所長は、日本は「人間の安全保障」を外交の柱としており、米中対立や新型コロナウイルスのパンデミック、気候変動による自然災害の増大などで国際的に不安感が高まる今の時代には、「人間の命を守る、暮らしを守る、尊厳を守る」という人間の安全保障の実現が今まで以上に重要になっていると強調。また、「政治情勢が不安定な国が増えているが、国家間の内政不干渉の原則を背景とした国レベルの支援に制限がある状況においては、市民社会の活躍が期待される。その際にNGOと研究者が連携することで、より適切な支援が行えるのではないか」と述べました。さらに、中国との外交関係については、対話を続けていくとともに、「怒るべきところは怒る」という二つの姿勢を粘り強く取り続ける必要があると語りました。

「人間の安全保障」の実現の重要性を強調したJICA緒方研究所の高原明生研究所長

猿田代表は、国際協力は人類全体の平和と安全、また、環境の保全を目指す活動であり、国家の防衛や抑止力を含む安全保障とは別次元のものであるにもかかわらず、近年では両者の境界が曖昧になっていると指摘。「国際協力と安全保障を一本化するのではなく、国際協力が持つ長期的な日本の人々への利益という視点を大切にする必要がある。また、対中対策の一環として人権重視や人権外交が叫ばれるようになってきたが、ご都合主義の人権重視ではなく、真の人権尊重を実現していくべき」と強調しました。

本木理事長は市民社会の視点からコメントし、「NGOの活動は、社会課題の解決はもちろんだが、人づくりなど長期的な視点で内発的な発展を促す側面がある。市民社会の良い点は、地域の目線で、人々がお互いを大切にしあえる社会を築けるよう地道に活動すること。国や資本といった論理を超えた市民社会のネットワークづくりこそ、世界のレジリエンスを高めるために重要」と語りました。

その後のディスカッションでは、日本ならではの外交や国際協力の在り方、グッドガバナンスをもたらすための戦略づくりの必要性、NGOやNPOを育てるための国の支援、官民の人材交流など、さまざまなテーマで議論が行われました。その中で高原研究所長は、「人間の安全保障の概念は非常に幅広く、輪郭がつかみにくいが、基本となるのは、さまざまな脅威に対抗していくために人々の能力や主体性を高める『エンパワメント』。人間の安全保障の概念を広めていくためにも、例えばJICAのプロジェクトがどのように開発途上国の人々の能力や主体性の向上につながるのか、検証する必要がある。その際に、現地の人々自身の『内発的な力』に着目することが重要」とコメント。各登壇者は、日本の外交と国際協力の発展のためには官民の人材の交流や流動化が鍵であり、さまざまなセクターの連携と協力が重要という点を確認し、セッションを終えました。

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