JICA緒方研究所

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スポーツの力で平和と結束を人々の手に—プロジェクト・ヒストリー英語版発刊記念セミナーを南スーダンで開催

2022年5月13日

ジュバ大学で開催された発刊セミナーには多くの学生らが参加(写真提供:ジュバ大学)

2022年3月17日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、南スーダン青年・スポーツ省、ジュバ大学とともに、「プロジェクト・ヒストリー」シリーズ『Peace and Unity Through Sports: South Sudan’s First “National Unity Day” and Its Inaugural Olympic Participation』発刊記念セミナーをジュバ大学で開催しました。

同書は、『スポーツを通じた平和と結束—南スーダン独立後初の全国スポーツ大会とオリンピック参加の記録』の英語版です。南スーダンでは紛争などによる不安定な社会情勢が続いていましたが、JICAと南スーダン政府はスポーツを通して国民の結束を図ろうと、2016年に第1回全国スポーツ大会「National Unity Day(国民結束の日)」を開催しました。当時、JICA南スーダン事務所長としてこの大会の開催に関わったのが、同書の著者である古川光明氏(現静岡県立大学教授)です。古川氏は同書の中で、南スーダンで紛争が繰り返される背景や平和構築におけるスポーツ大会の意義などを解説しています。

モデレーターを務めたジュバ大学のアブラハム・クオル・ニュオン社会経済学部長(写真提供:ジュバ大学)

発刊記念セミナーの冒頭では、JICA南スーダン事務所の山中祥史所員とジュバ大学のアブラハム・クオル・ニュオン社会経済学部長が開会あいさつをしました。山中氏は「『国民結束の日』に参加した選手や運営に関わった人たちは一体感を持ったり新しい友人ができたりと、スポーツを通して個人的にも社会的にも良い“変化”がもたらされている。今回のセミナーを通して、みなさんと改めてスポーツの価値を考えたい」と述べました。また、ニュオン社会経済学部長は「大学は差別のない場所であり、ここで学んだ人は南スーダンの人々を結束できる人間になって卒業していくはず。学業もスポーツも、我々の国をより良い場所にするための道だ」と述べました。

同書の著者である古川光明氏が書籍の内容を紹介(写真提供:ジュバ大学)

続いて古川氏が登壇し、書籍の内容を紹介。2014年11月にJICA南スーダン事務所長として赴任した古川氏は、「当時は紛争で多くの市民が犠牲となり、政府に対する不信感があった時期。しかし紛争のさなかでも民族の違いを超えて共にサッカーを楽しんでいる人々の姿を見て、スポーツ大会が国民の一体感を高めるだろうと確信した」と、「国民結束の日」の開催に向けて動き出したきっかけを語りました。無事2016年に第1回「国民結束の日」が開催されたものの、紛争は続き、同年のリオデジャネイロオリンピックへの選手派遣は諦めかけたといいます。そんな気落ちする古川氏に対し、北岡伸一JICA理事長(当時)がかけたのは、「こんな状況だからこそ、平和の象徴であるオリンピックで、南スーダンの人々の結束と自尊心を強めることが必要なのではないか?」という一言でした。それによりスポーツの重要性を再確認した古川氏は、現地の人々と共に活動を続け、南スーダンにとって初の参加となったリオデジャネイロオリンピックに続き、2021年の東京オリンピックにも選手団を送ることができました。古川氏は、「スポーツをする時は、誰もがいったん銃を置かねばならない。銃からスポーツへと武器を持ち替えて、共に平和のために戦おう」と南スーダンの人々へ熱いメッセージを送りました。

パネルディスカッションでは、ジュバ大学のアブラハム・クオル・ニュオン社会経済学部長をモデレーターに、青年・スポーツ省のエドワード・セッティモ・ユグ長官、ジョセフ・オミロク・オリンピックコーチ、古川氏がパネリストとして登壇。南スーダンにとっての「国民結束の日」やオリンピック参加の意義、また今後の課題や対応策などについて、活発な議論が交わされました。また、質疑応答では、陸上やサッカーなどで南スーダン代表選手団が活躍している一方、現場レベルのスポーツ環境は依然として厳しい状況にあり、より多くの若者がスポーツをする機会を得られるよう、政府はその役割をしっかり果たすべきであるなど、参加者からさまざまな質問や意見が寄せられました。

最後に、ジュバ大学のマーティン・ロゴ講師が「本日は、スポーツの価値を確認しあう良い機会となった。スポーツに関わる全ての人が協力し、スポーツの推進を通じてより良い社会を実現していこう」と閉会のあいさつをし、セミナーを締めくくりました。

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