JICA緒方研究所

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ASEAN-JICA Joint Research Project - Symposium on Human Security Integration 「ASEAN統合における人間の安全保障の主流化:その可能性と展望」開催

2009年5月12日

090330_02.jpg3月30日(月)、JICA研究所はシンポジウム「ASEAN統合における人間の安全保障の主流化:その可能性と展望」(ASEAN-JICA Joint Project: Symposium on Human Security in ASEAN Integration) を開催しました。フィリピンISDS (戦略開発問題研究所)、インドネシアCSIS (戦略国際問題研究所) を中心とするASEAN戦略研究所とJICA研究所の共同研究「ASEAN統合における人間の安全保障の主流化研究」の中間発表として、これまでの成果を共有し、今後の研究の方向性が議論されました。

開会あいさつにおいてJICA研究所の恒川惠市所長はアジアの繁栄には強固なASEANの存在が不可欠であり、ASEAN統合へJICAがさまざまな側面から支援すること、およびJICA研究所とASEANの共同研究の意義を強調しました。また、ISDSのCarolina G. Hernandez会長は基調講演の中で、この共同研究がアセアン統合における人間の安全保障を主流化させることにつながり、人を中心とした共同体の形成が実現可能となると述べました。

タイ、チュラロンコーン大学のKeokham Kraisoraphong教授は人間の安全保障の概念があいまいであることを指摘し、具体的なアジェンダの設定と政策ネットワーク形成の場として開催されている、学者やNGO、官僚など社会の多層な人が参加し協議するAPA(ASEAN People’s Assembly)の重要性を訴えました。また、早稲田大学の寺田貴教授はASEANの不干渉原則について、近年発生したミャンマーの自然災害を取り上げ、人間の安全保障を実現するために必要な地域の枠組みについての議論を提示しました。

CSIS のTeguh Yudo Wicaksono氏は、人間の安全保障強化のための経済成長を促進する上で、アセアン内の開発格差がその弊害となっていると指摘しました。Wicaksono氏が経済統合に向けて格差の是正と国内不平等への対策を主張する一方、JICA研究所の大岩隆明上席研究員は、開発格差是正への具体的な取り組みを紹介した上で、開発格差是正はすでに地域全体で推進されてきているが、貧困削減は必ずしも地域統合のアジェンダとなっていない、と指摘しました。

ISDS所長のHerman J. Kraft氏からは、APSC(ASEAN Political and Security Community)にて人間の安全保障を直接取り扱うためには、内政不干渉等の概念上の問題および政策実行能力などの組織的な問題など、未解決の課題が多々残されているとの指摘がありました。JICA研究所の本名純客員研究員はASEAN統合の中から海洋問題を取り上げ、海洋上の安全の問題は海賊だけでなく海を媒介とするさまざまな犯罪に対処していく問題であり、今後海洋問題を軍事上の問題としてではなく法執行上の問題として取り扱う必要があるとしました。

ASEAN1小.JPGフィリピン大学のMaria Ela L. Atienza准教授は、ASEAN社会・文化共同体(ASCC)の確立についてMDGsの枠組みを社会問題解決の一つの手段と位置づけ、その目的達成プロセスを加速化させる形でASEANの社会的統合を実現する展望が語られました。東京理科大学の大庭三枝准教授は、ASEANの社会的統合の中から特に食糧の安全保障問題について取り上げ、具体的に東アジア緊急米備蓄(EAERR)の取り組みおよび課題、さらには食糧安全保障の対象範囲の拡張の必要性を訴えました。

白石隆GRIPS副学長は、伝統的安全保障、非伝統的安全保障、人間の安全保障の概念上の違いに言及した上で、越境犯罪、感染症の脅威、環境問題が国境を越えた共通の脅威となっていることから、地域協力が重要なテーマであると述べました。このためには、国境を越えたNGOや市民グループのネットワークとも連携しつつ社会的圧力により、現場で実際に行動に移していくことと、これらNGOと市民グループの組織能力向上、さらには、各国の法執行機関のキャパシティ強化の必要性についても強調しました。

Hernandez会長は、人間の安全保障とアセアン統合という2つの重要なテーマをどのようにつなげることができるかという点が今後の主要な課題であると述べ、本研究の意義を強調し、従来型の政府およびASEANの視点によるアプローチではなく、知性を結集して人を中心とする現実的な運動の必要性を主張しました。

最後に東京大学の山影進教授から、今までの日本の外交およびJICAの技術支援が主に二国間を対象にしていたのに対し、今回のJICA研究所の共同プロジェクトへの取り組みは多国間を視野に入れた新しい試みであり、ASEANの統合と人間の安全保障を結び付ける野心的な試みでもあるとして今後への期待が寄せられました。

日時2009年3月30日(月)
場所ホテルニューオータニ東京
関連ファイル

ASEAN program(PDF/620KB)




開催情報

開催日時2009年3月30日(月)
開催場所ホテルニューオータニ東京

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