2010年9月29日
JICA研究所では最近、マニラ首都圏を事例とした2050年時点で想定される気候変動による洪水被害、および社会経済的コスト予測に関する研究が完了し、研究成果が発刊されました。この研究はJICA研究所の武藤めぐみ研究員が世界銀行とアジア開発銀行(ADB)と共同で進め、複数のアジア沿岸部の大都市を対象とする研究プロジェクトの一貫として実施されたものです。
都市レベルの洪水シミュレーション、社会経済への影響予測、政策提言などを含む分析手法を実務に適用する取り組みはすでに進められています。
研究成果は、最終報告書が主として向けられたマニラ首都圏の都市計画部局や、フィリピンにおけるJICAのオペレーションのみならず、政策立案者、開発援助機関、ならびに世界中の沿岸大都市の都市計画部局に活用され得るものです。武藤研究員は、様々なオーディエンスに対する同研究の有用性の発信に着手しています。
武藤研究員は8月24日、気候変動に対する脆弱性分析やアジア沿岸部の大都市における都市開発計画をテーマにバンコクで開催された国際学術会議Cities at Riskで、キャパシティ・ビルディングにおける同分析手法の有用性を説明。地理情報システムデータや洪水図から社会経済的コストを抽出する方法を提示しました。こうした研究手法を政策立案者および学術社会に提供することにより、参加者各自が携わるキャパシティ・ビルディング・プログラムの質の向上、更には学術界の参加者が自国政府との対話を通じて研究を実践に変換する手助けとなることが期待されます。
また武藤研究員は8月26日、マニラでADB関係者と会談し、気候変動に関するナレッジ・アクティビティについて話し合いました。研究報告では、より詳細な都市レベルの気候変動影響分析においてJICA-ADBの共同研究を促進するため、特に保健、都市の貧困問題、企業へのインパクトなどの分野に焦点が当てられました。
武藤研究員はJICA本部で9月17日に開かれたJICA研究所主催のセミナーにおいても、気候変動やキャパシティ・ビルディング関連プロジェクト、ならびに関連政策に携わる職員に対して研究成果を報告。
同研究がこうした分野におけるオペレーションにどのように貢献し得るか、との問いに答えました。武藤研究員は、今回の共同研究は主にアジアを対象としているものの、その分析手法はアフリカなど他の地域にも適用できると説明しました。武藤研究員は10月中旬に横浜で開かれる世界銀行主催の国際会議Eco2においても研究成果を報告する予定です。
関連研究領域: 環境と開発/気候変動
日時 | 2010年9月17日(金) |
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場所 | JICA本部 |
関連ファイル |
開催情報
開催日時 | 2010年9月17日(金) |
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開催場所 | JICA本部 |