JICA緒方研究所

ニュース&コラム

釜山ハイレベル会合が援助の転換点に

2011年12月26日

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 JICAの南南協力・三角協力への取組みなどについて発表するJICA研究所の細野昭雄所長
第4回援助効果向上に関するハイレベル会合(HLF-4)が11月29日から12月1日まで韓国釜山で開催され、156の国・団体から3000名を超える人々が参加しました。本会合には李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領やヒラリー・クリントン米国務長官、ポール・カガメ・ルワンダ大統領、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長らが出席し、開発援助政策の課題を協議しました。4回目の開催となる今回の会議の狙いは、援助効果向上に関する現在までの取り組みを評価すること、そして包括的枠組みと全ての参加国・団体共通の目標を設定し、これまでの努力を一層前進させることです。

JICA研究所からは、細野昭雄所長、島田剛企画課課長、本田俊一郎リサーチ・アソシエイトが本会合とプレイベントの学会に参加しました。プレイベントは開発効果への国際的取り組みをテーマに、韓国開発研究院(KDI:Korea Development Institute)と韓国国際開発協力学会(KAIDEC:Korea Association of International Development and Cooperation)による共催として、本会合に先駆けて開かれました。

援助を取り巻く状況の変化
ハイレベル会合は2003年にスタートして以来、変化を続ける世界の状況に合わせて会議の議題も進化してきました。当初は経済開発協力機構(OECD)・開発援助委員会(DAC)のメンバー国および国際機関が主導的役割を果たしていましたが、現在では被援助国やNGO、民間セクター、そして中国・インドなどの新興国など、多様な開発アクターが参加する形となりました。

DACメンバー国による開発援助は1995~98年に全体の80%以上を占めていましたが、2005~08年には56%まで減少しています。一方、民間セクターやDACメンバー以外の国々の援助拠出額は同期間に18%から38%へと上昇、現在も増加し続けています(『Catalyzing Development: A New Vision for Aid』JICA、KOICA、ブルッキングス研究所著、2011年)。経済不況下でDACメンバー国の政府開発援助が急増する見通しがない中、伝統的ドナーと新しい援助アクターがともに援助効率を高めるための方策を協議していく必要がでてきています。

今会合のテーマ「効果的な開発協力を目指して:新たなグローバル・パートナーシップの構築」もまた、新しい開発アクターの存在感が増大していることを示しています。会合では、民間セクターが効果的な援助・開発の実現において果たす役割について議論する場として民間セクター・フォーラムが設けられ、民間企業や基金団体、各国政府、開発機関らが意見交換を行いました。

       

新たな援助モダリティへの期待

また今回、かつての被援助国である韓国が議長国を務めたということも象徴的でした。李大統領が基調演説で述べたように、韓国は戦争によって疲弊し貧困に苦しむ被援助国でしたが、その後、目覚ましい経済発展を遂げ2009年にOECD・DACへ加盟、現在は過去の経験を元に途上国を支援しています。

さらに今会合では、ブラジルや中国などの新興ドナーの台頭を受け、南南・三角協力という援助手法が脚光を浴びました。南南協力とは途上国が他の途上国の自立・発展を支援することです。またこれをOECDドナーの協力のもと行うことを三角協力と呼びます。会合では多くの発表者が南南・三角協力の重要性を指摘し、同課題を取り上げたテーマ別セッションとサイドイベント(JICA・国連開発計画〔UNDP〕が共催)には関心の高い多くの聴衆が集まりました。

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 オープニングセレモニーでスピーチをする韓国の李明博大統領
JICAは過去40年間、南南・三角協力において先駆的な役割を果たしてきており、イーピンUNDP南南協力特別ユニット部長も発表の中で日本は南南・三角協力の成功者であると評しました。プレイベントとテーマ別セッションでJICA研究所の細野所長は、ブラジル、シンガポール、中米で実施された日本の援助プロジェクトの事例を挙げながら、JICAの豊富な実経験より得た知見を紹介しました。さらに、現地の機関がそれぞれの取り組みやパートナー国・地域のCDのための中心的な役割を担うことにより優れた成果を生んでいるとして、センター・オブ・エクセレンス(Center of Excellence: CoE)となっていることを紹介しました。紹介された中で最も注目を集めた成功例は、プロサバンナ・プロジェクトです。JICAはブラジルで不毛のサバンナを世界有数の大豆産地へ変えるプロジェクトを実施し、同国を技術的・経済的に援助してきました。今ではブラジルが日本の協力のもと、その経験で得た知識・技術をモザンビークの大豆生産を支援しています。このプロジェクトは最も成功した三角協力の事例の一つであり、クリントン国務長官も開会式の基調講演で言及しました。

テーマ別セッションでは出席者から、南南協力は南北協力(先進国〔北〕が途上国〔南〕を支援する従来の援助形態)にとって代わるのかという質問が出ましたが、新興国の発表者からは、南南協力は伝統的な援助を否定するものではなく、両者は互いに補完し合う関係にあるなどの質疑応答がありました。細野所長からは発表で、南南・三角協力と南北協力はそれぞれ比較優位な点を持っており、広範な開発領域で異なる知識を創造しうると強調しました。

しかし南南・三角協力への期待が高まる一方で、現場の知見にもとづく建設的な議論は十分に行われているとは言えません。マルコ・ファラーニ・ブラジル外務省国際協力庁長官は、理論に比べ実践経験が乏しいと指摘し、「さらなる努力が必要だ」と訴えました。細野所長は「知識が発展の鍵となる」として、「効果的な南南・三角協力のためには知的交流を通して相互の経験を共有していくことが必須である。」と主張しました。

3日間にわたる会議は、各国政府および参加機関による新グローバル・パートナーシップの採択で幕を閉じました。新枠組みは、国家のオーナーシップ、透明性、アカウンタビリティ、成果に基づく行動などに重点が置かれ、ブラジル・中国・インドなどの新興ドナーや民間セクターなどの幅広い参加者を考慮した広範かつ包括的な内容となりました。関係者の中には、署名国・団体がいかにして合意内容を実際の政策・行動に移し、またそれを継続していくのかが問題だという懸念の声もあります。

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 初日に開かれた南南協力・三角協力をテーマにしたパラレルセッション(右から二番目はJICA研究所の細野昭雄所長)

            

ハイレベル会合後の展望

しかしブルッキングス研究所のホミ・カラス上級フェローは今回の成果を前向きに評価しています。カラス氏は、「多くの新しい開発アクターが今回集結し成果文書に合意したことは大きな前進。」と述べ、「(新興国は)南南協力のドナー国として、また三角協力のパートナー国として今や開発協力の重要なアクターだ。」と語りました。

JICA研究所の細野所長は会合を振り返り、「途上国が今まで以上に大きな発言力を示す中、南南協力が注目を集めている。JICA研究所は日本の三角協力の経験を研究という観点から分析し、その教訓を導きだすことを求められている。研究によって得られた知見は多くの国々にとっても有益な情報となり、また将来JICAプロジェクトを実施する際の参考にもなるということを今回のハイレベル会合で確認することができ非常に有意義だった。」と話しています。

 

ムービー・コメンタリー

細野昭雄
JICA研究所 所長

日時2011年11月29日(火) ~ 2011年12月 1日(木)
場所韓国、釜山



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