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IMF・世界銀行年次総会で、世銀とセミナーを共催

2012.10.16

IMF・世界銀行(以下世銀)年次総会において、10月10日から13日まで開催されたメインイベントであるセミナー(the Program of Seminars: POS)の一環として、世界銀行とJICAの共催による「 Can Government Policies Lead to Good Jobs for Development? (政府政策によって開発に有効な就業の実現は可能か)」が10月12日に東京で実施されました。

このセミナーの目的は、政府の政策が就業にどのように作用し得るのかを中心に、各地域における経験を共有しながら、特に低所得国が持続可能な成長を達成するうえで就業が有効な手段となるかどうか、また就業による開発効果はどのような政府政策によって高められるのかを議論することにありました。

冒頭の挨拶で、田中明彦JICA理事長は「国により就業への戦略は異なるが、国の政策がどうあれ、その結果として社会における人々が公平で平等な仕事へのアクセスができることが大切である。また各国の政府は、その国の労働市場にマッチした雇用創出への政策を考慮すべきである」と述べました。

引き続き、ブルッキングス研究所のシニアフェローのハフィーズ・ガネム議長によるセミナーが実施され、4名のパネリスト—ラウラ・アルファロ ハーバード・ビジネススクール教授、ヌワイ・ゲブレアブ エチオピア首相経済首席顧問、マーティン・ラマ 世銀シニアア・エコノミック・アドバイザー、日本から澤田康幸JICA研究所客員研究員(東京大学教授)—が参加しました。

まず、「世界開発報告書2013年版」の責任者でもあるラマ氏は、世銀の報告書で「仕事」の必要性のテーマを取り上げたのは今回が2度目であり、世界危機からの回復が遅れている中で、現在、世界で約2億人の失業者が存在すること、また現在の雇用状態を維持するためには、2005年から2020年までの間に主としてアジアとサブサハラ・アフリカでおよそ6億人分の新規の仕事が創出される必要があると述べました。その一方で、「大切なことはただ数字だけでなく、就業を人々の生活水準の向上、生産性の上昇、社会的連帯の観点で考える必要がある」ことを強調しました。

前述の世銀の報告書で、調査の対象国24か国の一つであるエチオピアのヌワイ首相顧問は、自国での就業形態について「農業に従事する人口が大多数を占め、都市化はまだ20%に過ぎない」と説明したうえで、都市部では製造業よりも住宅建設や交通網などインフラ整備への就業が中心であり、労働集約的な零細企業によって支えられていることを説明しました。今後の課題として、製造業への移転や、政府からの資金やキャパシティ・ディベロップメントの構築などの必要性を強調しました。

コスタリカ出身のアルファロ教授は、自国の事例を取り上げながら、技術習得を含めた教育の重要性を指摘し、政府の役割として、マクロ経済の持続的な発展と、民間セクターにおいて特に若者への雇用創出の政策構築の必要性に言及しました。同教授は、就業におけるジェンダーバランスにも触れ、女性が仕事に従事できるように託児所のネットワークを広げるなどの社会的支援の必要性を強調しました。

世銀の報告書でも取り上げられているバングラデシュの就業形態について、澤田客員研究員は、インフラ整備の重要性と就業構造の変化に焦点を当てた発表を行いました。まず、農村での灌漑設備や農村と都市を結ぶ交通網のインフラ整備などによって非熟練労働力の農業から非農業への就業構造の円滑な転換が進められたことを挙げ、その例として衣料産業への女性の就業が増加したことを紹介しました。この結果として、合計特殊出生率※が5.1であったのが、2.3にまで下がったこと、また教育面でも初等教育、中等教育における女児の就学率が男児よりも高くなったことなど、同国の社会面での変革を引き起こしたことにも言及しました。

最後にガネム議長は、このセミナーで議論された要点として、開発の過程における雇用創出の重要性や、今後も増加する仕事への需要を満たす環境作り、また海外直接投資や外国人労働者といった国際経済との関連性などを取り上げ、今後も議論を継続していくべき課題として提示しました。

※合計特殊出生率とは、人口統計上の指標で、一人の女性が一生に産む子供の平均数を示します。

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左から、Hafez Ghanem,Laura Alfaro, Martin Rama, Newai Gebre-Ab, 澤田客員研究員

開催情報

開催日時:2012年10月12日(金)
開催場所:ホテルオークラ、東京

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