JICA緒方研究所

ニュース&コラム

東南アジア地域協力における「人間の安全保障」を議論するシンポジウムを開催

2010年11月11日

このほど、ASEANおよびAPEC諸国間の「人間の安全保障」と「地域協力」に焦点を当てたシンポジウムが、11月1日にJICA研究所で開催されました。同シンポジウムは、JICA研究所とASEAN戦略国際問題研究所連合(ASEAN-ISIS)が共同で取り組む「ASEAN統合における『人間の安全保障』の主流化」研究プロジェクトの中間成果を政策担当者ならびにドナー社会に紹介することを目的としたものです。

ASEAN地域内の統合が進むにつれ、域内での人、情報、モノの移動が増加し、人身売買や海賊行為、感染症など、国境を越えた脅威が高まっています。5年前のASEANサミットでは、日本はこのような脅威と戦うこと、ASEAN共同体の設立を支援することなどをコミットしました。今回のシンポジウムは、人間の安全保障の考えを取り入れた、こうした脅威に対抗するための地域協力の枠組みや、それを実施するために必要な国および地域レベルのガバナンス能力を強化する方策について議論することを目的としたものです。

2009年3月に東京で開催された第一回シンポジウムに続き、二回目の開催となった今回のシンポジジウムでは、「人間の安全保障とAPEC」に関する基調講演に加え、「東南アジアにおける人間の安全保障主流化の可能性」に関するパネルディスカッションが行われました。

シンポジウムの冒頭、各国の代表者らは、ASEAN地域の脅威はアジア太平洋地域全体へも影響が広がっていることから、ASEAN諸国が脅威への適応力を高めるためには、非ASEANドナーによるキャパシティ・ビルディングなど、同諸国への継続的な支援が重要であると主張。また、ASEANで進んでいる「人間の安全保障」への取り組みの経験について、APECがその行動計画に取り入れるための方策についても議論されました。

またパネルディスカッションには、JICA研究所の本名純客員研究員を含む4名のスピーカーのほか、2名の討論者が参加。本名客員研究員は自身の研究プロジェクトのテーマを取り上げ、東南アジアの海上安全の状況について発表しました。発表の中で本名客員研究員は、密漁・違法伐採、人身売買、麻薬密輸、武装強盗といった海事犯罪の範囲・規模について概観した後、地域共同トレーニング・プログラムや法の執行能力を高めるなど、地域ぐるみで脅威に対応することを提案しました。



Honna at ASEAN sympo.JPG
          本名純客員研究員
また、パネリストの一人は、「人間の安全保障」の概念化や定義付けが困難であることが、ASEANやAPECの枠組みへの導入を困難にしていると指摘。これに対し別の発表者は、人間の安全保障と伝統的安全保障との関係について詳細に説明した上で、ASEANは「ニーズ」だけでなく「権利」にも重点を置くべきだとの提案を行いました。また最後の発表者は、国家安全保障と人間の安全保障の間にあるギャップを健康リスクを例に説明。SARSや新型インフルエンザなどの大流行に対する効果的な地域協力の事例を紹介しました。

このシンポジウムは、JICA研究所とASEAN戦略国際問題研究所連合(ASEAN-ISIS)が共同で取り組む「ASEAN統合における『人間の安全保障』の主流化」研究プロジェクトの一環となるものです。本研究プロジェクトは、「人間の安全保障」の観点から、越境する脅威や課題に取り組む地域公共財の供給のあり方についての検討を通じ、「人間の安全保障」の考え方をどのようにASEAN統合プロセスに組み込めばよいか、その方策を検討するものです。本研究プロジェクトの成果は、すべてのASEANメンバー国に共有されるとともに、将来的に一冊の書籍にまとめられる予定です。

 関連研究領域: 平和と開発

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ムービー・コメンタリー

Carolina G. Hernandez フィリピン戦略国際問題研究所 会長

日時2010年11月 1日(月)
場所JICA研究所
関連ファイル

シンポジウムプログラム(PDF)

ワークショッププログラム(英語)(PDF)

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