JICA緒方研究所

ニュース&コラム

東南アジア地域のイスラーム和平交渉—国際社会の介入への期待

2010年8月9日

JICA研究所が実施する研究プロジェクト「東南アジアにおけるイスラームの位置」では、昨今のグローバル化の中で変容を遂げている東南アジア地域の多様なイスラームが、地域の情勢にどのような影響を与えているかという研究を行っています。7月28日、この研究プロジェクトの公開シンポジウム「東南アジアにおけるイスラームと平和」が開催され、プロジェクトメンバーによる研究成果のフィードバックとパネルディスカッションが行われました。

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チャイワット・サタアナンド氏

冒頭、チャイワット・サタアナンド氏(タイ・タマサート大学教授)はタイ南部のイスラームを取り巻く現状について触れ、「近年は、モスクや寺院のような"神聖な場所"までが攻撃されるようになっている。世界的に見ても、イスラームの紛争は激化していると言わざるを得ない」と指摘。しかし、こうした宗教間に見られる諸問題の根源には政争や経済格差などの政治的問題が存在するとの認識を示し、「宗教は主張を正当化しようとする際に護身のために用いられているのであり、宗教自体が問題を引き起こしているのではない」と強調しました。

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マイケル・マストゥーラ氏

一方で、和平交渉の進展が期待されるフィリピン・ミンダナオでまさに直接的に交渉に携わってきたマイケル・マストゥーラ氏(ミンダナオ和平交渉MILFパネルメンバー)は、ミンダナオ和平の複雑な事情について述べた上で、「日本は国際監視団に参加するだけでなく、NGOをメンバーに含む国際コンタクトグループにも参加している。また、JICAは日本のODA実施機関として非常に早い時期から継続してミンダナオへの支援を実施している。このように多様な角度から国際社会が貢献してくれることが、問題解決への大きな助けとなるはずだ」との見解を述べました。

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オマール・ファルーク氏と見市建氏

続いて行われたパネルディスカッションでは、オマール・ファルーク氏(広島市立大学教授)が「和平交渉の実務者であるチャイワット、マストゥーラ両氏の意見は大変意義深い」と述べた上で、「9.11をきっかけに国際社会がイスラームに目を向けるようになったが、まだまだ表面化されていない問題がたくさんある。世界全体が共有して取り組んでいくべき課題である」とコメント。また、ムスリムが大多数を占めるインドネシアの事例を踏まえて、見市建氏(JICA研究所特別研究員・岩手県立大学准教授)が、紛争の主体の明確化、和平交渉への第三者の介入 民主化の及ぼす影響について問題提起を行いました。そして最終的に、イスラームの平和実現に向け、国際社会の関与、特にJICAなど開発を視野に入れた協力に対する大きな期待が示されました。

このシンポジウムを通じて、紛争を、宗教上の対立といった単純な構図ではなく、地域の政治経済上の問題に着目して理解することの重要さが共有されました。また、そうした問題の解決のためには政治的・経済的な手段が必要であり、そういった観点からも国際社会の関与やモニタリング、さらにはODAなどの援助は不可欠という意見が出されました。

 今後、本プロジェクトでは一連の研究をまとめた書籍を来年に出版する予定です。今回のシンポジウムでの議論も書籍に反映するとともに、和平交渉をはじめとした、今後のJICAの協力に反映していく方針です。

関連研究領域: 援助戦略

関連研究プロジェクト: 東南アジアにおけるイスラームの位置

ムービー・コメンタリー

見市 建 JICA研究所特別研究員・岩手県立大学准教授

■プログラム概要

10:00 開会挨拶:加藤 宏(JICA研究所副所長)
10:10 特別スピーチ:
           • Dr. Chaiwat Satha-Anand チャイワット・サタアナンド
                  (タイ国タマサート大学教授)
           • Datu Michael Mastura マイケル・マストゥーラ
                  (弁護士、ミンダナオ和平交渉MILFパネルメンバー)
11:00 パネルディスカッション:
             司会進行:飯塚 正人(東京外国語大学教授)
             パネリスト(予定):
           • Dr. Chaiwat Satha-Anand チャイワット・サタアナンド
           • Datu Michael Mastura マイケル・マストゥーラ
           • Dr. Omar Farouk オマール・ファルーク
                  (広島市立大学教授)
           • 見市 建(JICA研究所/岩手県立大学准教授)
12:00 質疑応答
12:30 閉会

日時2010年7月28日(水)
場所JICA研究所
主催者JICA研究所
関連ファイル

ワークショップ・プログラム(英語)(PDF)

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