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カンボジアにおけるドル化の影響:IMF-JICA合同会議で小田島健上席研究員が発表

2015.02.27

2015年2月18日、国際通貨基金 (IMF)とJICAは合同で、「アジアの開発途上・フロンティア諸国:包摂的な高度成長の支援」と題するハイレベル会合を開催しました。会議には、アジア諸国の閣僚や中央銀行総裁、政策立案者、研究者や、国際開発金融機関の関係者が参加し、アジア諸国の包摂的かつ持続的な成長を実現する上で必要な政策について、議論を行いました。

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小田島上席研究員

会議では、財政政策、中小企業振興、金融政策やインフラニーズの解決などをテーマとしたセッションが行われましたが、JICA研究所の小田島健上席研究員とカンボジア中央銀行のKhou Vouthy研究・国際協力部門長が「資本・金融市場の強化」をテーマとしたセッションに登壇し、共同で進めているカンボジアでのドル化に関する研究プロジェクト「カンボジアにおける自国通貨利用促進に関する実証研究」について発表しました。

国内金融市場の発展のために重要な脱ドル化は、カンボジアを含むアジア諸国が共通して抱える課題の一つです。カンボジアでは、ポルポト政権時代に貨幣と銀行制度が廃止されたことや、1992年に国際連合カンボジア暫定統治機構(UNTAC)によって多量のドルが持ち込まれ、ドルを基盤とした経済再建や金融システムの再構築が進んだことが原因となり、ドル化が進行しています。JICA研究所はカンボジア中央銀行と協力し、カンボジアの各経済主体(家計、企業、金融機関)によるドル通貨の利用実態を調査しています。これまでに行った調査結果からは、カンボジアにおけるドル通貨の使用は、特に金融セクターや都市部において顕著であり、中小企業や都市部以外の地域では、自国通貨リエルが中心であることが明らかになりました。これを踏まえて、小田島上席研究員は、通貨・為替政策と同時に、経済取引における決裁システムを充実させるなどして、市場原理を踏まえた自国通貨使用を促すことが脱ドル化を進める上で重要であると説明しました。

本発表について、ラオスとモンゴルの中央銀行関係者が、それぞれの国におけるドル化の経験を踏まえたコメントを行いました。この中では、アジア通貨危機の影響でドル化が進行したラオスで、国内における自国通貨取引手段の向上や、外貨準備高の調整、為替政策などによって脱ドル化を進めた経験が共有されました。また、1993年の為替自由化によるインフレーションの結果ドル化が進んだモンゴルでは、2009年に制定された国内経済取引における自国通貨使用に関する法律によって脱ドル化が進みましたが、更なる経済政策が必要であることが報告されました。

続いて行われた意見交換のセッションでは、国外で医療サービスなどを受けるためにドルによる貯蓄が浸透するなど、異なる背景でドル化の問題を抱えるモルディブの例など、参加国の経験や課題が共有されました。また、ドル通貨流通によるマクロ経済の安定化や通貨切り下げリスクの低下といったメリットを考慮した上で、バランスある経済政策を進めることが重要であるといった意見が示されました。

開催情報

開催日時:2015年2月18日(水)
開催場所:JICA市ヶ谷ビル

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