全ての人にインクルーシブな教育を:比較国際教育学会で研究成果を発表
2015.03.30
2015年3月8日から13日にかけて、比較国際教育学会(Comparative and International Education Society: CIES)の年次会合が米国・ワシントンD.C.で開催されました。CIESは、教育分野では主要な学会であり、年次会合には各国から多くの教育開発研究者が参加します。JICA研究所からは、本会合の3つのセッションに参加し、教育分野で行っている研究の成果を共有しました。
ポスト2015年開発アジェンダにおいては、障害児を含む全ての児童が、質の高い教育を受けられるようにすることが重要な課題となっています。JICA研究所は「障害と教育」の研究プロジェクトを実施しており、今回の年次会合では、「Disability and Inclusive Education for the post 2015 Agenda Setting」と題するセッションを主催しました。冒頭黒田一雄早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授(JICA研究所客員研究員)が研究の背景や研究手法について説明しました。続いて、亀山友理子研究員がモンゴルの事例を紹介し、モンゴルでは、障害児を通常学級で教育することに対し、教員よりも保護者の方が肯定的な見解を示していることを報告しました。また、研究分担者であるダイアナ・カルティカ氏(早稲田大学博士後期課程在籍)は、カンボジアの調査から明らかになった課題として、学校へのアクセス手段や教員研修、教員のためのリソースの欠如が問題であることを指摘しました。続いて杉村美紀上智大学総合人間科学部教育学科教授がネパールの事例について発表し、教員研修を実施しているモデル学校、聾学校、障害児を多く受け入れている公立学校の3校を事例に、保護者、校長、教員の学校形態への見解に対する相違点を分析した結果を共有しました。ラミチャネ・カマル筑波大学教育開発国際協力研究センター准教授(JICA研究所招聘研究員)は、視覚障害を有する教員と生徒の相互の選好について発表しました。ラミチャネ准教授は、生徒が視覚障害を有する身近な人と交流することにより、生徒の視覚障害を有する教員への選好の可能性が高くなるという分析結果を発表しました。最後に、川口純大阪大学人間科学研究科助教が、タイの障害者スポーツにおける調査の中間結果を発表し、障害者スポーツは、当事者だけでなく家族など身近な人へ社会的・精神的効果を与えることが明らかになったことを報告しました。
結城研究代表(右)、吉田教授(右から4番目)
英国国際開発省(DFID)、米国国際開発庁(USAID)と世界銀行グループによるパネルディスカッション「How understanding education systems can help to ensure learning for all」では、研究所の研究プロジェクト「学習成果と衡平性に資する教育システム分析ツール(SABER)の開発研究(参加型学校運営制度、分権化とアカウンタビリティを中心に)」の成果が発表されました。結城貴子研究代表と吉田和浩広島大学教育開発国際協力研究センター長が、教育政策やシステムを比較するツールやデータベースの構築を含むプログラムであるSABERを用いて、JICAが支援を行っているブルキナファソとセネガルの教育制度の質と実践を分析した事例を紹介しました。会場からは、制度分析ツールの効果的な利用方法、インパクト評価との関連性、教育制度全体への援助の効果を長期的に評価することの必要性などについて意見や質問がありました。
さらに、伊芸研吾研究助手が、「Leveraging gender in education: New evidence from cross-sectional and longitudinal studies」と題したセッションにて、「イスラム紛争影響国における人的資本形成とジェンダー平等:イエメンにおける基礎教育の事例研究」に基づく発表を行いました。途上国における女子児童の教育へのアクセスの阻害要因の一つとして、親の認識(児童の教育水準に関する願望や女子教育への理解)の低さが挙げられます。本セッションでは、イエメン農村部における女子教育に対する親の認識は、女子の結婚年齢と職業に対する親の認識、両親の教育レベル、および家父長的な規範と関係があり、女子児童の就学、就学年数、初等教育の修了状況の決定要因の一つであるという計量分析の結果を報告しました。
伊芸研究助手
年次会合に参加した研究者は、今回の学会で行われた議論やフィードバックを今後の研究に活用し、その成果をまとめていく予定です。
開催日時:2015年3月8日(日)~2015年3月13日(金)
開催場所:米国、ワシントンD.C.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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