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公共政策に必要なリーダーシップと実践知とは:公開フォーラム「政策イノベーション:ガバナンスの新たなパラダイム」を開催しました

2015年4月22日

2015年3月27日、JICA研究所は政策研究大学院大学(GRIPS)と共催で、公開フォーラム「政策イノベーション:ガバナンスの新たなパラダイム」を開催しました。

 

発表を聞く参加者
発表を聞く参加者
順調に社会経済発展を続ける東南アジア諸国では、複雑化する政策課題に対応できるガバナンスの強化が求められています。このような背景を踏まえてJICA研究所は、GRIPSと連携し、2013年から組織経営に関する東南アジア各国の経験の体系化と、我が国の公共セクターにおける組織経営の経験を東南アジア諸国(インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム)と日本の間で共有する研究活動を実施しています。

 

今回の公開フォーラムでは、参加国の第一線の有識者が集い、研究の成果を紹介するとともに、国や地方自治体の課題解決力を増進するための実効的な「知」を探ることを目的として開催されました。

 

主催者挨拶をする加藤宏JICA理事
主催者挨拶をする加藤宏JICA理事
フォーラムでは横道清孝GRIPS副学長と加藤宏JICA理事による主催者挨拶に引き続き、野中郁次郎一橋大学名誉教授による「国、地域、コミュニティの知識ポテンシャルを解き放て--社会的価値の共創」と題した基調講演が行われました。この中で野中名誉教授は、国家においては、国、地域、コミュニティそれぞれのレベルで知が実践される三次元モデルが必要だと指摘し、良き実践知のリーダーは、(1)「善い目的」をつくる能力、(2)場づくりができる能力、(3)現場で本質を直観する能力、(4)本質を概念化し表現する能力、(5)実現する政治力、(6)知を伝承・育成し、組織に広げる能力をもって、知の実践に努めるべきであると述べました。さらに、政策とは未来への物語をつくること、生き方としてのマネジメントそのものであり、公共経営は、多様な関係者を巻き込み、協働と総合を促進する必要があることを指摘しました。また、アレックス・ブリリャンテス フィリピン大統領府高等教育副大臣・行政学会会長が二つ目の基調講演として政策イノベーションを加速するためのリーダーシップとマネジメントに焦点をあて、2年間の研究の成果について発表しました。

 

基調講演に続き行われた「アジアにおける行政改革の成果と課題」と題したパネルディスカッションでは、フィリピンのカイエターノ・パデランガ国家開発学院会長が、同国の公務員研修制度の改革について、インドネシア大学のエコ・プラサジョ教授が同国の行政改革の事例について発表しました。さらに日本の改革事例として、菊地敦子一般財団法人公務人材開発協会代表理事が、日本の公務員制度改革について説明し、高田寛文GRIPS教授による司会のもと、活発な意見交換や質疑応答が行われました。

 

セッション「アジアの多様な価値に基づくガバナンスの新たなパラダイム」audience
セッション「アジアの多様な価値に基づく
ガバナンスの新たなパラダイム」
アジアの多様な価値に基づくガバナンスの新たなパラダイム」と題したセッションでは、畝伊智朗JICA研究所所長が司会を務めました。まず、タイ・プラジャディポック王学院のウティサン・タンチャイ院長が、王室への敬意や仏教など、タイの価値観に基づく公務員のあり方やその課題について発表しました。日本の経験事例として、武居丈治自治大学校客員教授が、岩手県遠野市による地域資源を活かしたまちづくりの取り組みを共有しました。さらに、アジア生産性機構(APO)の荻原直紀調査企画部長が、APOがアジアで進めている知識創造経営を推進する取り組みについて説明しました。発表後、アジアの行政改革の経験として世界に発信しうるものは何かという点や、知識創造理論の公的機関での応用上の課題などをめぐり議論が行われました。

 

JICA研究所とGRIPSは今後、参加国の研究活動成果をとりまとめ、最終的には、各国の公務員研修やJICAによる研修などでも広く活用される書籍として出版する予定です。

<関連リンク>

政策研究大学院大学

日時2015年3月27日(金)
場所政策研究大学院大学



開催情報

開催日時2015年3月27日(金)
開催場所政策研究大学院大学

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