2015年5月7日
JICA研究所の成田大樹研究員が、気候変動によって起こる被害・影響を新たな要素を組み込んで貨幣価値に換算して推計した論文『Environmental Tipping Points Significantly Affect the Cost-Benefit Assessment of Climate Policies』が、米国科学アカデミーの正式機関誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されました。『PNAS』は、科学の分野で、『ネイチャー』『サイエンス』と並ぶ重要な学術誌として知られています。論文は、気候変動による社会的費用が、従来考えられていた水準を大きく上回る可能性があることを指摘しており、今後の議論に問題を提起するものとなっています。
「地球の肺」とも呼ばれるアマゾンの森林 |
成田研究員によると、気候変動による被害・影響コストの推計で、不可逆的なリスク要素を取り入れた研究は従来もあったが、非代替のリスクの要素を取り入れた研究は今回の論文が初めてとのことです。成田研究員は「今後の気候変動の議論に問題を提起するものとなりうる研究であり、今後も研究が深められる必要がある」と話しています。
成田研究員は現在JICA研究所で、アジアの都市における大気汚染や、エチオピアの森林の貨幣価値換算、JICA事業の気候変動への適応などについて研究をしています。今回、PNASに掲載された論文は、成田研究員がJICA研究所に着任する前にドイツのキール世界経済研究所在籍中から続けていた研究をまとめたものです。