JICA緒方研究所

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GDN(Global Development Network)年次総会開催 新「緑の革命」に向けて課題を議論

2015年7月13日

開発途上国の研究能力の開発とネットワーキングを目的としたグローバル・ディベロップメント・ネットワーク(Global Development Network、GDN)の第16回年次総会が、2015年6月11日から13日まで、モロッコのカサブランカで開催されました。JICA研究所はGDN地域ネットワークの一つであるGDNジャパンの事務局をつとめています。今回の年次総会のテーマは「Agriculture for Sustainable Growth: Challenges and Opportunities for a New ‘Green Revolution'」(持続的成長のための農業-新「緑の革命」への挑戦と可能性)でした。JICA研究所からは畝伊智朗所長や細野昭雄シニアリサーチアドバイザー(SRA)らが参加し、2つのセッションを主催しました。

 

発表を行う細野昭雄SRA
発表を行う細野昭雄JICA研究所SRA

6月11日に行われたセッション「The Possibility of Inclusive Business in Agriculture and Nutrition: Introducing Good Practices of BOP Business」(農業分野と栄養分野におけるインクルーシブビジネスの可能性)には、細野SRAがスピーカーとして登壇し、インクルーシブビジネスの事例として、ヤクルト本社が途上国で展開しているヤクルトレディによる販売の事例や、マラウイなどでの一村一品の事例を紹介しつつ、インクルーシブビジネスは貧困層を消費者(需要側)としてだけでなく、生産者(供給側)としても捉える総合的なアプローチが必要と指摘しました。

 

UNDPのSahba Sobhani氏は、国連ミレニアム開発目標(MDGs)が期限を迎える2015年以降の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を達成する手段としてのインクルーシブビジネスという視点で、民間セクターを通してBOP層の経済にどのように関わっていくかということに言及しました。また、UNDPのBusiness Call to Action (BCtA)のネットワークに参加しているトルコの企業の活動(ドライフルーツ生産)を紹介しました。同じくスピーカーとして登壇した味の素株式会社研究開発企画部の取出恭彦専任部長は、同社がガーナで試験的に実施した栄養改善プロジェクトの事例を紹介し、持続的なソーシャルビジネスのためには、(1)商品開発、(2)デリバリーシステムの構築、(3)地域の人びとの理解を深めること、(4)民間連携が重要だと指摘しました。アジア経済研究所の佐藤寛氏の司会のもと、熱心な議論が行われました。

 

畝伊智朗JICA研究所所長
進行役をつとめた畝伊智朗JICA研究所所長

6月12日に行われたセッション「Toward Rice Green Revolution in Sub-Saharan Africa」(サブサハラアフリカにおける米の緑の革命に向けて)では、畝所長がモデレーターをつとめ、「アフリカ稲作振興のための共同体」(CARD)イニシアチブに焦点を当て、米を中心にしたアフリカの緑の革命の可能性について議論を交わしました。

 

CARDは、アフリカでの米需要の急増を受け、JICAと「アフリカ緑の革命のための同盟」(AGRA)等が2008年に共同で立ち上げた国際イニシアチブです。アフリカ23ヵ国を対象に、2018年までの10年間にアフリカの米の生産量を2,800万トンに倍増させることを目指しています。

 

ウガンダで米の収穫をする農民
ウガンダで米の収穫をする農民
(写真:船尾修/JICA)

畝所長は冒頭、CARDが「なぜ米の増産を目指すのか」について説明。需要が高まっているのに生産が追い付いていない現状や、アフリカには栽培に適した環境があること、米のバリューチェーン(価値連鎖)ができれば他の穀物もそのバリューチェーンを利用できるようになること、などを説明しました。政策研究大学院大学(GRIPS)の大塚啓二郎教授はJICAが支援しているCARD関連のプロジェクトを対象に行った計量分析の研究結果を共有しました。続いてAGRAのNamanga Ngongi元事務局長はCARDイニシアチブにおいてAGRAの果たした役割について、ACETチーフエコノミストのYaw Ansu氏は、アフリカの経済構造改革の視点から農業分野の構造改革におけるCARDイニシアチブの重要性について、そして、コーネル大学のPrabhu Pingali教授は、広い視野から議論すべくGreen Revolution 2.0と公共政策についてそれぞれ発表しました。最後に、大塚教授が「サブサハラアフリカでの米の緑の革命は可能である」と総括しました。

 

総会最終日には、開発分野における研究や刷新的な開発プログラムを発掘・助成する為に日本政府の資金により授与されている「日本国際開発賞」(プロジェクト部門・リサーチ部門)の表彰式があり、畝所長がプレゼンターを務めました。2015年の国際開発賞プロジェクト部門には、山間地で農業に従事している貧困女性たちを支援するために女性の組織化とエンパワーメント(能力向上)を進めるインドのプロジェクトなどが選ばれました。

 

関連ファイル

発表資料:Policy options for inclusive business (細野、PDF、1.1MB)

発表資料:Overview, Progress and Challenges of CARD initiative for a Rice Green Revolution (畝、PDF、443KB)

日時2015年6月11日(木) ~ 2015年6月13日(土)
場所モロッコ、カサブランカ



開催情報

開催日時2015年6月11日(木)~2015年6月13日(土)
開催場所モロッコ、カサブランカ

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