JICA緒方研究所

ニュース&コラム

PM2.5に焦点を当てた「アジア都市大気環境改善研究」がスタート

2015年8月17日

JICA研究所は、微小粒子状物質(PM2.5)に焦点を当てた「アジア都市大気環境改善研究」に着手しています。2015年8月6日、東京・市ヶ谷のJICA研究所で第1回論文執筆者会合を開き、研究プロジェクトが本格的に動き出しました。

 

議論を進める北野副所長と成田研究員
議論を進める北野副所長と成田研究員

多くのアジア諸国では、急速な発展に伴う都市の大気環境悪化が深刻な問題になってきています。なかでもPM2.5は、浮遊粒子状物質のなかでも粒径が2.5マイクロメートル(2.5ミリメートルの千分の一)以下のもので、呼吸時に気管を通り抜けて気管支や肺の奥まで達するため、呼吸器系疾患に加え、循環器系疾患も引き起こす恐れがあると懸念されています。PM2.5の排出・生成・浮遊などに関する実態把握や対策などが求められていますが、PM2.5に特化した政策研究はアジア地域においてはまだあまりありません。それだけに、JICA研究所の畝伊智朗所長は今回のプロジェクトについて、「アジア域内共通の新しい課題に焦点を当てた意義深いもの」と説明します。

 

研究の方向について発表する山田研究員
研究の方向について発表する山田研究員

今回の研究プロジェクトは、タイ・バンコクでの1年間のPM2.5観測と、各国の政策研究との二本柱となっています。タイでの観測は、タイにあるアジア工科大学院(AIT)と、新潟にあるアジア大気汚染研究センター(ACAP)に委託し、2015年9月から1年間行います。タイでは、1年間を通じてPM2.5を成分別に測定した例はなく、季節による変化や、PM2.5がどのような物質で構成されているのかなどを分析し、対策を検討します。

 

政策研究は、各国の過去、および現在の取り組みを研究し、検証します。PM2.5対策に関しては、日本の取り組みや、中国、韓国、モンゴルの現状をまとめるほか、メキシコについても、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)で実施された研究成果をまとめる予定です。また、比較的早くからPM2.5対策に取り組んできたヨーロッパの経験とアジアに対する示唆も取り上げる予定です。そのほか、スマートシティに関する取り組みを通じた都市大気汚染緩和政策やアジアの都市におけるエネルギー政策と大気汚染といった観点からも考察していきます。

 

深刻な大気汚染でかすむモンゴル・ウランバートル(2010年)
深刻な大気汚染でかすむモンゴル・
ウランバートル(2010年)

論文執筆者は、JICA研究所の研究員、JICA地球環境部の職員や日本国内の研究者のほか、中国、韓国などアジア域内の専門家も加わります。8月6日の会合では、北野尚宏JICA研究所副所長から、研究の全体像の説明があり、執筆者のこれまでの研究や、今回の研究での執筆の方向性などについて議論が行われました。議論の結果、データ分析を中心とした研究と、政策研究とでは、異なる方向性のもとに執筆を進めることになりました。

 

研究成果は、2016年10月に開かれる国連人間居住会議(ハビタット3)に向けて、それぞれの研究者が自身の担当分野についてワーキングペーパー(論文)にまとめ、発表する予定です。

 

日時2015年8月 6日(木)
場所JICA市ヶ谷ビル



開催情報

開催日時2015年8月 6日(木)
開催場所JICA市ヶ谷ビル

ページの先頭へ