JICA緒方研究所

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UNU-WIDER30周年記念会議で畝所長が援助政策について議論

2015年10月8日

国連大学世界開発経済学研究所(UNU-WIDER)の設立30周年を記念し、2015年9月17日~19日、研究所があるフィンランド・ヘルシンキで記念会議が開催されました。3日間にわたる会議では、5つの全体会合と26の個別セッション、ノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・セン氏およびジョセフ・スティグリッツ・アメリカ・コロンビア大学教授による基調講演などが行われ、先進国、途上国の各国・地域から、研究者や実務者、学生など約600人が参加しました。JICA研究所からは畝伊智朗所長が参加し、「Aid Policy and the post 2015 Agenda」のセッションで座長を務めました。

 

議論する畝所長(左)ら
議論する畝所長(左)ら

個別セッションは、UNU-WIDERの研究プロジェクトの成果の発表が主な目的です。一方、畝所長が座長を務めた19日のセッションは、援助政策などについて議論するもので、広く関心を集めました。パネリストとして、イギリス国際開発省(DFID)などで長くイギリスの援助や外交にかかわり、現在はオープン大学の客員教教授を務めるMyles Wickstead氏、OECD開発援助委員会(DAC)元議長のRichard Manning氏、同元事務局長のRichard Carey氏、コメンテーターとして世界銀行アフリカ地域人間開発局元局長のRitva Reinikka氏が参加。開発援助の政策・実務に携わってきた専門家たちが、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継となる持続可能な開発目標(SDGs)の援助方針や課題、意義などについて意見を交わしました。

 

パネリストとして最初に登壇したWickstead氏は、第二次大戦後の援助政策を振り返り、SDGsの持つ政策的な意味について持論を展開。続くManning氏は、援助量、国益を含めた援助の目的、援助効果の視点から、DAC加盟国の援助政策について考えを述べました。また、Carey氏は、中国の対外援助について懐疑的な見方が強い中、国際社会の議論やSDGsのモニタリングに中国を参加させる必要があるのでは、と提起しました。

 

インドの子どもたち
インドの子どもたち
(写真:久野真一/JICA)

SDGsについてパネリストからは、MDGsは途上国のみが目指す目標であったのに対し、SDGsは先進国も途上国も同じ目標に向かう新しい枠組みである点についての期待が語られました。コメンテーターのReinikka氏は、MDGsや貧困削減戦略書(PRSP)の経験を引き継ぎながら、SDGsを世界的な基準とするために何をすべきなのかと問題を提起しました。

 

その後の質疑応答では、韓国国際協力団(KOICA)のKim Young-mok総裁、元世界銀行チーフエコノミストのJustin Lin氏などから多くの質問とコメントが寄せられました。その中でも、中国の対外援助をどのように見るべきか、という点に議論が集まりました。

 

畝所長は、「参加者は、SDGsが先進国を含めた世界共通の目標となり、それが新しい世界システムになるのではないかと受け止めていた。このことには、大きな意味があるとあらためて感じた」と座長を務めたセッションを振り返りました。また、中国の援助が議論を呼んだことについて、「日本の援助も1960~70年代、欧米などから批判的にとらえられていた時期がある。しかし、援助先進国やDACとの協議を通じて、公正さや透明性を高め、現在の評価につながった。こうした経験を検証しながら、今後の取り組みを考えるべきだ」と話しています。

日時2015年9月17日(木) ~ 2015年9月19日(土)
場所フィンランド、ヘルシンキ



開催情報

開催日時2015年9月17日(木)~2015年9月19日(土)
開催場所フィンランド、ヘルシンキ

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