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「研究機関はSDGs達成に向けて重要な役割を担う」:リーチIDS所長がJICA研究所で講演

2015年12月8日

ジェトロ・アジア経済研究所とJICA研究所は、英国サセックス大学開発研究所(IDS)のメリッサ・リーチ所長による特別講演「持続可能な開発目標と研究機関の役割」を2015年11月19日、JICA研究所で開催しました。日本の開発研究の第一線で活躍する研究者ら100人以上が参加し、日英の3機関が持続可能な開発目標(SDGs)にどのように貢献できるのか、互いにそのビジョンと戦略を共有しました。

メリッサ・リーチ所長
講演をするメリッサ・リーチ所長

リーチ所長は、世界でグローバル化や多極化が進む中、世界の国々・地域は相互に関連し合っており、開発はもはや先進国が開発途上国に援助を提供するという単純な図式では表せなくなっていると指摘しました。

 

世界が相互に関連している例としてリーチ所長は、気候変動とエボラ出血熱のケースを紹介しました。気候変動については、その要因を生み出している国から遠く離れた国にも影響が及んでいるという事実を挙げ、西アフリカで発生したエボラ出血熱の流行が世界全体でパニックを引き起こしたことについては、「情報も、細菌も、人も、世界を自由に移動する時代である」と説明しました。

 

リーチ所長は「これまで通りの開発モデル、すなわち、単純に経済成長や貧困削減を追い求めることでは、私たちの未来が立ち行かないということは明らかです。すなわち、科学者たちがいう"地球の限界(planetary boundaries)"の枠のなかで成長を実現する必要があるのです」と話し、SDGsは、地域、国家、地球の各レベルにおいて、持続可能な開発を目指す新たな道筋となり得ると説明しました。また、各国政府がSDGsとのかかわり方を模索するなかで、研究機関は重要な役割を担っていると述べました。

 

Pパラオ共和国
気候変動の影響が懸念される
パラオ共和国(写真: 鈴木革/JICA)

「‎SDGsが達成され、希望に満ちた未来がやってくるのか、それとも深い失望がやってくるのか、私たちは今、その重要な分かれ道にいます。研究機関には、目標を現実のものとするために果たすべき大きな役割があると考えています」

 

次にリーチ所長は、「engaged excellence(質の高い研究のための協働)」をテーマとしたIDSの新たな5ヵ年戦略について説明しました。この戦略は、相互に関連する4本の柱から構成されており、第1の柱は、質の高い研究成果の発信、第2は、研究者以外も巻き込んだナレッジの共同構築、第3は、インパクトをもたらす取り組みのエビデンスの収集と発信、第4は、ゆるぎないパートナーシップの構築、となっています。

 

リーチ所長は、IDSが、SDGsの17の目標のもとに、どのように活動するのか具体的な事例を挙げて説明し、「日本の研究機関とのパートナーシップを築いていきたい」と結びました。

 

続いて、JICA研究所の北野尚宏副所長が「SDGsに関するJICA研究所のビジョンと研究計画」について発表を行いました。北野副所長は、JICA研究所はJICAのプロジェクトと連携し、開発途上国の現場で直面するさまざまな問題や成果を研究していると述べました。また、研究所のフラッグシップ研究として、「質の高い成長」が掲げる4つの要素(包摂性、持続可能性、レジリエンス、イノベーション)を重視した研究を進めていることを紹介しました。

 

アジア経済研究所の佐藤寛上席主任調査研究員は、日本の研究機関は、SDGs策定のような議論にもっと深く関与するべきだと指摘しました。

日時2015年11月19日(木)
場所JICA市ヶ谷ビル



開催情報

開催日時2015年11月19日(木)
開催場所JICA市ヶ谷ビル

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