JICA緒方研究所

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「ODA歴史研究」スタートに向けて第1回会合を開催

2016年2月2日

JICA研究所は、日本のODAの成り立ちと変遷などを振り返り、新しい時代の国際協力につなげることを目的とした「ODA歴史研究」を立ち上げる予定です。

右から下村教授、佐藤教授、畝所長

2015年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)が国連総会で採択され、日本では新たな「開発協力大綱」が閣議決定されました。これらの新しい枠組みの下で支援を行うにあたり、改めて日本のODAの成り立ちを含め、実施、役割、制度改革などを振り返る研究を行い、より質の高い成長に貢献することを目的としています。

2016年1月23日、研究内容を検討する「内容検討会」の第1回会合がJICA市ヶ谷ビルで開催され、研究者や実務者、民間企業など、幅広い参加者が議論を交わしました。

冒頭、JICA研究所の畝伊智朗所長は、研究の方向性について、受益者・受益国の視点、日本の国民や日本国内の開発関係者の視点、そして大規模インフラ案件や人材育成など長期的効果の視点を意識していくと説明しました。畝所長は「この研究は、行政機関の視点からまとめるODA正史ではなく、研究者を中心にODAの変遷や役割などを分析して取りまとめる」と、広い視点からの研究であることを示しました。

続いて、第1巻「日本の援助政策の軌跡」(仮称)を執筆予定の下村恭民法政大学名誉教授が、構想素案を発表しました。下村教授は、長期間にわたって広く引用される基本文献となることを目指して、日本の経済協力・援助に関する内外の定説を洗い直し、援助理念や国益追求動機と内外の政治・経済・社会的変化との間の相互作用の中で形成された「日本の援助経験を等身大の形で再構築する」との意欲を示しました。

その後、第2巻「世界の中の日本の援助」(仮称)を執筆予定の佐藤仁東京大学東洋文化研究所教授は、第2巻のねらいについて、「世界、特に被援助国の人々が日本の援助をどう評価し、日本は何から教訓を学んで援助をしてきたのか、世界の援助潮流の中でどのような位置づけにあったのかを明らかにする。そこから、今後の日本の援助のあるべき姿を描き出す」と説明しました。また、特定の地域や国を対象と比較事例分析、援助規範の収斂と拡散、日本が強みと考えている事項が世界の評価と一致しているかなどの視点を持って検証する考えも示しました。

議論する参加者たち

参加者からは、ODAの歴史を残す有意義な研究であるとの意見があったほか、事実の羅列でなく教訓が得られる分析を含めること、また、セクター別や地域別の事項、日本のODAの特徴と世界における位置付け、企業を含む様々なアクターの役割などを含めることなどの提案が出されました。

より多くの関係者の意見を聞くため、JICA研究所は今後、名古屋、神戸、広島でも内容検討会を開催します。各都市での議論を受けて、本年中頃までに全体構想、第1~2巻、第5巻の内容を固めて作成を開始し、5年後を目途に完成を目指します。

畝所長は研究について、「日本は、支援の受け手から援助国となる過程で多くの教訓を得ている。この教訓を生かし、より世界の発展に貢献するODAとするためにも、この研究の意義は高い。ODAの黎明期に活躍した人材も高齢化している。記憶をつなげていくのは、我々の世代の重要な役割である」と話しています。

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