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人間開発報告書2015刊行記念シンポジウムで「人間開発のための仕事」について議論

2016年3月29日

JICA研究所と国連開発計画(UNDP)は2016年3月14日、東京のJICA市ヶ谷ビルで、人間開発報告書2015刊行記念シンポジウムを共催し、報告書のテーマである「人間開発のための仕事」について議論しました。

近藤哲夫UNDPの開催あいさつ

セミナーでは、UNDP人間開発報告書室長のセリム・ジャハン氏が基調講演を行いました。また、JICA研究所客員研究員で、静岡県立大学国際関係学研究科・国際関係学部の島田剛准教授が、「仕事の質」を高めるためのカイゼンの効果について、ILO駐日代表の田口晶子氏が仕事におけるジェンダー格差についてコメントし、畝伊智朗JICA研究所長がGDPなどの経済指標では測りきれない仕事の価値を訴えました。

近藤哲生UNDP駐日代表は、開会あいさつで「2015年」という年について、持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、開発の潮流では重要な年であったと述べました。その上で、同年は人間開発報告書が1990年に最初に発行されて25年を記念する年でもあることに触れ、その報告書の根底には、「人間開発とは、単なる経済的な豊かさだけでなく、人々の生活の豊かさに焦点をあて、人々の選択肢を広げることである」との考え方があると述べました。

ジャハン室長は基調講演で、人間開発報告書2015について、次の5つの基本的なメッセージを紹介しました。

1. 「仕事」(work)は、職業(job)や雇用(employment)よりも広く、無償の家事労働やボランティア活動、音楽、美術、文学などの創造的活動も含まれる。
2. 「仕事」を取り巻く状況、具体的にはどこで、誰が、いつ、何を、どのようにという要素は急激に変化している。
3. 有償労働でも無償家事労働でも、ジェンダーによる格差が存在し、その格差が人間開発に大きな影響を及ぼしている。
4. 持続可能な「仕事」とSDGsとは深く関連している。
5. 「仕事」と人間開発の質を高めるためには、戦略性があり実践可能で、総合的な政策が欠かせない。

セリム・ジャハン室長

ジャハン室長は、「この25年で極貧状態から10億人以上が抜け出すなど、人間開発の観点から進展がみられた。今なお残る貧困や苦しみをなくし、多くの人々が未来をつかめない状況を改善し、格差を解消するためにも、『仕事』と人間開発はしっかりと結び付けられなければならない」と述べました。また、持続可能な仕事とは人間開発を促し、環境への負荷も小さいものだと指摘しました。

島田准教授は、外部有識者としてコメントし、日本に始まり、世界に広がった「カイゼン」は人間開発報告書の指摘を実現していくための一つの方法ではないかと述べ、カイゼンプロジェクトの成果に関するJICA研究所の研究結果を説明しました。

この研究は、中南米8カ国(グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、ドミニカ共和国、コスタリカ)の98企業でのJICAカイゼンプロジェクトを調査・分析しています。島田准教授は、経営陣と労働者への調査結果の一端を紹介し、カイゼンは、雇用の拡大、経営陣と労働者との協力関係の強化、生産性向上による成果の公正な分配という3つの目標に対して成果を上げていることを示しました。そして、「仕事の質の向上のために途上国にカイゼンを紹介していくことを提案したい」と述べました。

畝伊知朗JICA研究所長の閉会あいさつ

また、もう1人の外部有識者、田口ILO駐日代表は、報告書が幅広い視点からまとめられていることと、ジェンダー間の不均衡の問題に取り組んだ点を評価しました。

畝伊知朗JICA研究所長は閉会あいさつで、「この報告書の画期的な点は、『仕事』を、職業や雇用よりも広い概念でとらえ、GDPなどの経済指標では測れない無償の家事労働やボランティア活動、創造的活動にも光を当てたことにある」と指摘しました。

また、「質の高い成長」と「人間の安全保障」の重要性を強調し、「質の高い成長」への理解を高めるため、JICA研究所が2つの研究に取り組んでいることを紹介しました。

関連リンク

関連動画

【動画】Interview with Selim Jahan, director of HDR Office, UNDP(JICA研究所公式チャンネル)

【動画】"Human Development Report 2015 - Work for Human Development" by Selim Jahan (Mar. 14, 2016)(JICA研究所公式チャンネル)

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