2012年10月31日
アジアの新興ドナーである韓国、中国、インド、マレーシアなどは、OECD-DAC加盟国の従来の枠組みにない理念的、制度的特性を備えており、援助手法や対象の多様化が進んでいます。また、日本を含むアジア・ドナーの教育分野への支援は、人材育成を重視するアジアの伝統もあり、それぞれの理念やシステムの特性を反映しています。
こういった特性を踏まえ、アジア・ドナーである韓国、インド、マレーシア、香港からの研究者を招き、特に教育分野での開発途上国支援を比較し、相違点と同時に共通項を探る目的で、10月25日JICA市ヶ谷で、JICA研究所と名古屋大学国際開発研究科との共催による国際シンポジウム「教育分野におけるアジア新興ドナーと日本:アジアらしさの模索と多様性」が実施されました。
開会の挨拶で登壇した名古屋大学国際開発研究科長の藤川清史教授は、日本の開発援助は、これまで欧米のモデルを取り入れながら独自の開発学を構築し、人材育成やネットワーク作りを中心に進めてきたことに触れ、「このシンポジウムで、日本とアジア新興ドナー国が、アジア地域で連携していく重要なプレーヤーとして相互理解を深めるきっかけとなることを期待している」と述べました。
続いて、細野昭雄JICA研究所所長は、研究所が研究対象としている新興国ドナー、特に東アジアの新興ドナーの存在感の増大を指摘しました。また、昨年行われた韓国、釜山でのハイレベルフォーラムで発表した内容にも触れ、JICAの南南・三角協力のパイオニアとしての教育分野も含めたこれまでの活動と経験が新興ドナーにとって参考となり得るとの考えを示しました。
シンポジウムの冒頭に先駆けた開催の趣旨の説明を行った、名古屋大学の山田肖子准教授は「教育セクターにおける日本を取り巻く援助環境の変化:国際援助動向とアジア・ドナー」の題目で、日本の援助の比較優位として「自助努力」への支援を日本モデルの特徴として挙げました。
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結城研究員 |
この4名の発表の締めくくりとして、ディスカッサントである香港教育学院のMok Ka Ho教授は4か国の事例を総括した上で、教育分野を含めた援助の今後の在り方として、アジア地域という枠を超えた多様性に対応できる政策を構築し、単に政策のコピーでなく、お互いの失敗や経験から学んだ上での協力の重要性を指摘しました。
後半のセッションでは、先の5名のパネリストが参加し「アジア・ドナーの類似点、相違点とアジア型教育支援の可能性」の題目でパネルディスカッションを行いました。議論の中で、各国が自国のよい経験とその考えを他国と共有することは大切だが、決して受益国に押し付けず、それぞれの国の優先順位に沿って、その国に適した援助を行っていくことの重要性が確認されました。
最後に質疑応答セッションで、会場から「アジアらしさ」への質問が相次ぎ、アジアの援助は西洋諸国の援助の補完なのかという質問や、今までの欧米型の援助との比較などが出されました。これに対してパネリストは「教育におけるアジア型モデル」や、EU、米国、アジアといった枠組みにこだわらず、必要な人に適切な援助を行っていく重要性を強調しました。
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左から、山田肖子准教授、Mok Ka Ho教授、Ahmad Abdul Razak准教授 Tilak Jandhyala B.G.教授、Chung Bong Gun教授、結城貴子研究員 |
日時 | 2012年10月25日(木) |
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場所 | JICA研究所、東京 |
開催情報
開催日時 | 2012年10月25日(木) |
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開催場所 | JICA研究所、東京 |