JICA緒方研究所

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「SDGsに三角協力は貢献できる」日本の経験を踏まえ、JICA研究所の細野アドバイザーが発言

2016年6月20日

JICA研究所の細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザー(SRA)が2016年5月19日、ポルトガルのリスボンで開催された「三角協力に関する国際会議」に出席し、「三角協力は、SDGsを達成する上で、重要な役割を果たしうる」ことを強調しました。

発表する細野SRA

南南協力とは途上国が他の途上国の発展を支援することで、三角協力とは、この南南協力を経済協力開発機構(OECD)ドナー国と共に行うことを指します。今回の会議は、三角協力に携わる実務者や政府関係者が一堂に集い、三角協力に関する知識・経験を共有するために開催されました。主催者のOECD開発協力局、ポルトガル援助庁のほか、国連南南協力事務所(UNOSSC)、国連食糧農業機関(FAO)、国際労働機関(ILO)、イベロアメリカ事務局、JICAやUSAID、GIZなど各国の援助機関、インドネシア、南アフリカ、モロッコ、ブラジル、チリ、ラトビア、コスタリカなどから開発協力の関係者約100人が出席しました。

細野SRAは基調講演で、SDGsの特徴として、「対象となる開発課題の枠組みが広がり、世界的な問題に取り組むために地域や地球規模でのアプローチが今まで以上に必要となっている。そのため、先進国と途上国、民間や研究機関など多様なステークホルダーを巻き込んだ「グローバル・パートナーシップ」がさらに重要となり、SDGsの達成のためには、様々なアクターからの資源を動員し、地域、地球規模で影響を与えられるアプローチが必要」と分析。「三角協力は、知識の共有と共創、信頼醸成、能力構築に寄与するという特性を持っており、SDGsを達成する上で重要な役割を果たし得る」と述べました。

地雷を探知しているCMACの職員

また、三角協力のこれらの特性は、開発協力大綱に書かれた自主性の尊重、対話と協働、相互学習といった日本の協力の精神に一致すると指摘。JICAの三角協力の例として、カンボジア地雷対策センター(CMAC)による地雷に苦しむコロンビアやアンゴラへの協力、中米諸国、汎米保健機構(PAHO/WHOのアメリカ地域事務局)と共に実施したシャーガス病対策、マレーシアの経験を活かした「ザンビア投資促進プロジェクト-トライアングル・オブ・ホープ」を紹介し、三角協力の意義と、先進国の役割を具体的に示しました。

細野SRAは、先進国の援助機関であるJICAはカンボジアとアンゴラ、中米諸国と地域の国際機関、マレーシアとザンビアを結びつける「ファシリテイター」、「触媒」の役割を担い、途上国間の対話や相互作用を促進させることができたと説明。そのことから細野SRAは、SDGsの時代には、CMACのような「センター・オブ・エクセレンス(中核的拠点)」の発展を国際社会が支援することが重要だと述べました。

会議の参加者たち

基調講演に続くセッションでは、三角協力の実態や成功のための要因、三角協力を促進する方法などが議論されました。このうち、三角協力を促進する方法については、民間セクターやNGOへの参加呼びかけや、アクター間のオープンな対話等が重要であるとの意見が出されました。

会議は、今後、11月上旬の南南協力EXPO、11月下旬の効果的な開発協力に関するグローバル・パートナーシップ(GPEDC)ハイレベル会合などの機会を捉えて、SDGs実施に三角協力がどう貢献できるのかを打ち出し、三角協力の促進に向けて協力していくことを確認して、幕を閉じました。

細野SRAは「JICAは長年にわたり三角協力の促進に深くかかわってきた。この分野でのJICAの貢献は現場レベルでの三角協力の実施に限らず、国際的な議論への貢献、JICA研究所での事例の研究分析などにも広がっている」と話しています。

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