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2050年の長期経済成長予測とそれに向けた政策・戦略を提示:JICA研究所も協力した書籍「The World in 2050: Striving For a More Just, Prosperous, and Harmonious Global Community」刊行

2016年7月8日

新興市場が直面する課題を世界のハイレベルのリーダーの間で議論するEmerging Markets Forum(新興市場フォーラム、EMF)の研究成果をまとめ、2050年までの長期経済成長予測と、この予測を踏まえて今後、行政や企業がとるべき政策や戦略を提示した書籍「The world in 2050: Striving For a More Just, Prosperous, and Harmonious Global Community」がOxford University Pressから発行されました。JICA研究所は本書の基となった研究などに協力しています。

編者は、EMF創設者で、最高経営責任者のHarinder S. Kohli氏。世界各国の25人が執筆を担当しています。

食糧生産と食糧安全保障は大きなテーマの一つ (写真:関健作/JICA)

構成は、18章からなり、1章で、ここ半世紀の経済、社会状況を振り返り、2章で、世界経済情勢に影響を与え得る10のメガトレンド(世界的な大きな流れ)として、1. 人口動向、2. 都市化、3. 国際貿易、4. 金融のグローバル化、5. 中所得層の拡大、6. 天然資源、7. 気候変動、8. 技術革新、9. グローバル経済の変革、10. コミュニケーション技術革新を紹介しています。3章以降で、その動向や課題への対応策や政策提言を、最新の研究や国際場裏の議論を踏まえて論じています。

また、JICA研究所は、2015年11月に東京で開催されたEmerging Markets Global Forum 2015の開催にも協力しています。この2015年の年次総会では、本書の中でも章の一つとして取り上げられている、「食糧生産と食糧安全保障」のセッションで加藤宏JICA理事が、「都市化」のセッションで田中明彦東京大学教授(JICA前理事長)がそれぞれ議論をリードしました。また2016年4月11日-12日、フランス・パリで開催された刊行記念イベントでも、やはり本書の大きな柱の一つ、「持続可能な開発」をテーマとした「Beyond Growth: Achieving Sustainability」のセッションで、加藤宏JICA理事が登壇しています。

本書では、歴史を振り返り、世界の多くの人が貧困状態で、飢えや病気に苦しんでいた60年前からの目覚ましい進歩に触れ、今後も、そうした経済発展が続くと考えられると述べています。世界の多くは都市化し、中所得層が拡大し、より良い教育が提供され、健康的な生活を享受できる社会となり、多くの人々が貧困から自由になった。ただ、世界的な高齢化などにより、成長率自体は、徐々に下がっていくだろうとしています。

こうした将来予測を踏まえ、本書は、政治、経済、ビジネスのリーダーは、現状に甘んじることなく、国内だけでなく国外からも起こりうる危機に備え、それらへの強靭性を継続的に高めていかなければならないと指摘しています。

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