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TICAD VI サイドイベントでコロンビア大学IPDとの共同研究の成果に基づき議論

2016年9月2日

JICA研究所はJICA産業開発・公共政策部と協力して、2016年8月26日ケニア・ナイロビで、国連開発計画(UNDP)、アフリカ開発銀行(AfDB)、ジョセフ・スティグリッツ教授率いるコロンビア大学政策対話イニシアティブ(IPD)との共催で、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)サイドイベント、「産業政策を通じたアフリカの構造転換とアジェンダ2063の実現」を開催しました。JICA研究所からは北野所長、島田招聘研究員が登壇しました。

登壇した北野所長(左)と島田招聘研究員

開会の挨拶に立った北岡伸一JICA理事長は、今日のアフリカ社会が抱える格差や雇用問題等の諸課題に対し、産業化が果たす役割を明らかにした上で、産業化の一事例として日本の明治時代の輸出産業の発展過程について紹介しました。また、産業分野においてJICAがアフリカで展開するカイゼンの取り組みや、アフリカの学生に日本への留学機会とインターンシップを提供する「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)」を紹介しました。

基調講演に登壇したスティグリッツ教授は、コロンビア大学IPDとJICA研究所とのこれまでの共同研究の成果である書籍「Industrial Policy and Economic Transformation in Africa(コロンビア大学出版会)」や「Good Growth and Governance in Africa(オックスフォード大学出版会)」の内容を紹介しつつ、アフリカの雇用の創出や構造転換を実現するために、「学び続ける社会(Learning Society)」を築くことの重要性を強調しました。また、アフリカ各国の「ダイナミック(動学的)な比較優位」に基づいた産業開発を進めるには、そうした学びに基づいた産業政策を取ることが重要であり、JICAのカイゼン事業は学びを促進しながら産業開発を進める良い取組であると述べました。

続いて、ヘレン・クラークUNDP総裁は、産業化と構造転換を進める上で重要となる分野として、人材育成、若年層支援、富の公平な分配のための法整備や民間セクターの支援、環境に配慮した自然資源の活用、地域統合等を挙げました。チャールズ・ボアマAfDB副総裁は、7月下旬にAfDBが採択したアフリカの産業化戦略を紹介しました。

島田招聘研究員(左)の進行で話し合う 参加者たち

パネルディスカッションでは、島田剛招聘研究員がモデレーターを務め、アフリカの構造転換のボトルネックとはなにか、また、どのような政策が必要とされるかをテーマに、ヤウ・アンス、アフリカ経済転換センター(ACET)チーフエコノミスト、ジョモ・クワメ・スンダラム、元国連総会経済社会委員会事務次長はじめ5名のパネリスト及びスティグリッツ教授が意見を交わしました。

富吉賢一JICA理事は、タイの自動車産業の事例を踏まえ、政府が長期的な産業政策や計画を持つことの重要性について述べました。他のパネリストからは、開発金融や為替政策といった幅広い産業政策を導入することの重要性や、産業集積に基づいたイノベーション、貿易体制を考慮した開発計画の必要性についての意見が述べられました。

北野所長は閉会の辞の中で、開発の現場での実践と研究との対話が重要であることを指摘するとともに、JICA研究所として、コロンビア大学IPDと現在取り組んでいる「アフリカにおける質の高い成長」に関する研究の成果が、今後国際協力の現場で活用されるよう、触媒としての役割を担っていくと述べました。

また、翌8月27日には、JICA研究所とIPDの第4次共同研究「アフリカにおける質の高い成長」の第2回執筆者会合が開催されました。アクバル・ノーマン、コロンビア大学教授が司会を務め、スティグリッツ教授のあいさつに引き続き、北野所長が「アフリカにおける質の高い成長実現に向けた東アジア諸国の役割」と題してあいさつしました。

続いて、セレスティン・モンガAfDB次期副総裁・チーフエコノミストはじめ執筆者7名が研究の進捗を発表しました。島田招聘研究員は「グリーン産業政策に向けて」のテーマで、グローバルな環境問題及び、ローカルな環境汚染の問題に関し発表し、経済構造の転換のために、今後は環境面に配慮したグリーンな産業政策を行っていく必要があることを論じました。他の執筆者からは、貿易協定が産業政策に及ぼす影響、経済の複雑性と成長の関係、GDPに代わるマクロ指標、知的財産権などのテーマについて発表があり、活発な意見交換が行われました。

関連リンク (JICA広報室 ニュースリリース)

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