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ブータン政府による幸福度の新調査に向けた会合に参加

2012.11.22

10月30、31日にブータンの首都ティンプーで実施された国立ブータン研究所主催の「幸福に関する実務者・研究者会合:Meeting of Practitioners and Scholars of Happiness」と題された会議に、高橋義明研究員がアジア、その他の地域から出席した幸福度研究の専門家と共に、ブータンの幸福度を測定する目的で使われる国民総幸福度(Gross National Happiness:GNH)の次期調査に向けたアドバイザーとして出席しました。

同会議では、前回2008年の調査結果を踏まえ、来年にも予定されている次期調査の調査設計について具体的に検討されました。その中で高橋研究員は、これまでの日本や開発途上国における幸福度研究の成果を踏まえ、①ブータンの幸福度は従来の測定方法では、幸福度の分布で中間値を選択する者が多いため、日本よりも平均値が低くなるが、他のアジア諸国と同様に中庸を取るという文化の影響を受けている可能性があり、その理由を解明するため、「理想の幸福感」を調査することが重要であること、②生活時間の調査は幸福度を測る上で重要だが、前回の調査は調査日前日の時間の使い方を聞いており、結果的に曜日(平日か週末か)、季節、月(農家の繁忙期か繁閑期か)が区別できておらず、曜日・季節の適切な割付が必要であること、などを指摘しました。会議の終了に際して、国立ブータン研究所のカルマ・ウラ所長から「今回の会議は終わりでなく、始まりであり、今後も協力をお願いしたい」と今後の協力要請がありました。

今回の滞在を機会に高橋研究員は、パロ近郊の農村などを訪問し、一般の人たちと幸福度について意見交換を行いました。訪問した小学校では生徒にとって幸せを感じるのは「家族と過ごす時」、「友達や両親がトラブルに直面した際に役に立てた時」、「新しい友達と出会った時」、「地域が上手く行っている時」といった身近な他者との関係を挙げる子どもが多く、人を宝とするブータン社会の一端が伺われました。一方、ティンプー近郊の耐震性が十分でないマンションなどの建築ラッシュや、通学途中に道路で遊ぶ子どもの脇を猛速度で疾走する自動車社会化など、発展と幸福のバランスを探るブータンの苦悩が伺われました。

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ブータンでの高橋研究員(左)

イタリア、ベネチアでの会議で、「幸福度と他者との関係」の題目で発表

引き続き、11月1日から4日まで開催されたイタリアのベネチアでのISQOLS (International Society for Quality-of-Life Studies) による第11回学会で高橋研究員は、10月の第4回OECD世界フォーラムにおける発表を発展させ、幸福感には他者との関係が重要な役割を果たすという研究を紹介しました。本発表の座長を務めた幸福度研究の第一人者であるヴァンホーベン・エラスムス大学名誉教授からは「更なる調査分析を期待する重要な発表だった」との指摘を受けました。また、同会合に記念講演者として参加した、幸福の経済学の祖、南カリフォルニア大学イースターリン教授とも幸福度と満足度の意味の差異について議論を戦わせる機会を得ました。

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開催情報

開催日時:2012年10月30日(火)~2012年10月31日(水)
開催場所:ブータン、ティンプー

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