JICA緒方研究所

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GDN年次会合で、アジアにおける多様化した開発金融の事例を発表

2011年1月31日

GDN2011_2.JPG金融危機以降、経済的打撃を受けた各国ドナーは自国の経済基盤を立て直すことを優先したために、途上国に充分な援助を供与することが難しくなっています。途上国の貧困削減のためには継続的な援助が必要であることから、開発資金を補完するための施策が不可欠になっています。

 

国際援助に携わる研究所や大学などで構成する国際機関「グローバル・デベロップメント・ネットワーク(GDN)」では、今年度取り組むべきテーマの主柱としてこの問題を掲げました。世界中に点在する地域ネットワークや研究者、援助関係者らと議論し、知識の共有や解決への糸口の探究をすすめる機会として、2011年1月13~15日、南米コロンビアの首都ボゴタで年次会合が開催されました。「金融危機後の世界における開発金融:新たな視点の必要性」をメインテーマとした今会合に、コロンビアのフアン・サントス大統領をはじめ世界中から研究者や援助関係者ら約400人が参加し、地域ネットワークのひとつであるGDNジャパンの事務局を務めるJICA研究所からは恒川惠市所長らが出席しました。 

 

メインテーマを多面的に議論するために「開発金融:新たな課題」や「金融セクターの開発と国内資金の活用:別の角度から見た国連ミレニアム開発目標」などといった6つの全体セッションが設けられました。このほか、マイクロクレジットや海外出稼ぎ労働者の本国送金などのテーマを個別に取り上げた18の分科会も開かれました。 

 

その分科会のひとつをGDNジャパンと東アジア開発ネットワーク(EADN)が共同で開催しました。テーマは「アジアにおける開発金融の多様化」。金融危機以降、アジアでもドナーによる途上国への援助資金の投入量が減少しています。そのような現状の中、継続的な支援を行うために様々なかたちの開発援助が行われています。この分科会では、援助受入側である途上国側の視点も踏まえながら、それら事例の動向を考察したうえでインパクトを分析・研究し、その成果を参加者に発表することを目的としました。 

 

司会はEADNの事務局であるフィリピン開発研究所(PIDS)のジョセフ・ヤップ所長が務め、発表者としてGDNジャパンのアドバイザーであり、新たにGDN理事にも就任した林薫・文教大学教授、JICA研究所の研究プロジェクト『援助受入国から見たアジア新興ドナーのインパクト』研究の代表者を務めた佐藤仁・東京大学准教授、グントゥル・スギヤルト・アジア開発銀行(ADB)シニアエコノミストの3人が研究報告を行いました。 

 

林教授は、ネットとグロスの資金フローのデータを分析し、金融危機後の世界を取り巻くODAのトレンドについて展望した研究結果について論じました。その中で、アジアの途上国開発のために用いられる資金が多様化している現状を踏まえて、それらの国々におけるODAの存在意義や役割についてネットの援助総額だけでなく、グロスの支出額も含めて論じる必要があることに言及しました。また被援助国の開発レベルによってODAの位置づけが異なることを示す一方、支出純額がマイナスとなる現象ついて必ずしも援助の必要がないことを表しているわけではないが、今後この点についてさらに議論を深める必要があることも論じました。

 

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発表する佐藤准教授

佐藤准教授は、開発援助における新興ドナーの存在意義や役割について、カンボジアでの道路復興支援の事例を用いて論じました。開発の現場で協調しながら援助を行う伝統的ドナーに対して、タイや中国など新興ドナーは資金を投入する際、各々が独自の戦略に基づいて行っていることを解説しました。この動向を援助受入側の視点で見ると、伝統的ドナーが援助しきれていない部分を、新興ドナーが補完していると考えられることから、取引コストの増加というリスクはあるものの、カンボジア政府は新興ドナーの存在を好意的に捉えていると論じました。

 

グントゥル・スギヤルト・ADBシニアエコノミストは、ODAの補完代替としての海外出稼ぎ労働者から本国への送金について論じました。アジア出身の海外出稼ぎ労働者からの本国送金総額が1988年から2008年の20年間で18倍の1,620億米ドルとなった経済効果として、送金受入国の内需拡大や投資事業の活性化などを挙げる一方、インフレや国内労働力のモチベーション低下などの懸念事項にも言及しました。また事例として、フィリピンなど一部の途上国では、海外出稼ぎ労働者からの本国送金は、貧困層の家計を支えるだけでなく、外貨獲得など自国の開発を下支えする新たな開発資金の役割を果たしている実情を解説しました。

 

この分科会のほかに、開発分野における研究プロポーザルやNGOなどによる革新的な開発プロジェクトを発掘・助成することを目的として日本政府が提唱・資金支援して創設された国際開発賞にかかる審査会・授賞式が行われました。恒川所長が審査委員長と授与スピーチ・プレゼンターを担当し、GDN事務局などからは長年にわたる日本政府の本賞支援について繰り返し感謝の言葉が表されました。 

 

日時2011年1月13日(木) ~ 2011年1月15日(土)
場所コロンビア ボゴタ
主催者グローバル・デベロップメント・ネットワーク(GDN)
言語英語



開催情報

開催日時2011年1月13日(木)~2011年1月15日(土)
開催場所コロンビア ボゴタ

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