『Japan's Development Assistance: Foreign Aid and the Post-2015 Agenda』

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本書は、「第二次世界大戦後の日本の外交政策の主要で、おそらくは最も重要な手段」(田中明彦前JICA理事長)としての役割を演じてきた日本のODAについて、その60年の歴史を振り返るものです。

2015年にミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)が達成期限を迎え、同年9月にはそれに代わるものとして、国連サミットで持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)が採択されました。また同年末のCOP21では気候変動への新しい枠組みが議論されました。このように、2015年という年は、変わりゆく開発課題の捉えなおしと、それらへの取り組みのあり方が問われた大きな節目の年になりました。本書は、そのようなタイミングをとらえて、日本のODAの歴史を振り返りつつ、これからの日本の国際協力が果たすべき役割を問うという問題意識のもとに出版されました。

編者は、加藤宏JICA理事(元JICA研究所所長)、John Pageブルッキングス研究所上席フェロー、下村恭民法政大学名誉教授の3人が務めました。

本書は、日本のODAの果たしてきた歴史について、網羅的な振り返りを意図しています。その特徴は、戦後の全歴史を通じて、二国間援助と多国間援助の双方を取り上げたこと、NGOを含む開発援助の実務家の視点に加えて研究者の視点からの分析も含めたこと、そして日本だけでなく、欧米やアジア、アフリカの著者による分析も収録していることです。

本書は、大きく6つのパートに分かれています。

導入では、日本の二国間ODAとマルチ(多国間)ODAの双方の歴史をまとめています。続く第1部では、日本の二国間援助の始まりと援助機関の設立、ODA政策の変遷、被援助国としての経験などが、特にポリティカル・エコノミーの観点から論じられています。

第2部は、開発潮流の変化や、主にアジアから出てきた新しい援助アクターについて分析しています。アジアの新興ドナーが、OECD開発援助委員会(DAC)の伝統的な援助の考え方よりも、日本の援助の考え方に近い立場をとったことなどに注目しています。また、日中韓の援助の比較や、日本のODAが重点を置く地域が東アジアからアフリカへ移ったことも取り上げています。

第3部は、「Instruments and Footprints (援助の手法と実績)」と題し、インフラ整備や産業構造転換、財政支援など、日本が多用した援助アプローチの検証や、人間の安全保障に関する取り組みや青年海外協力隊の歴史などを取り上げています。第4部では、国際協力の潮流において大きな役割を果たした国連、世界銀行、OECDと日本がどうかかわったかについて分析しています。

まとめの第5部は、「Quo Vadis: The East Asian ODA Model and the Post-2015 Development Agenda(どこへ行く:東アジア型ODAモデルとポスト2015開発アジェンダ)」と題し、日本の開発援助の経験を今後、どのように活かすべきかとの視点からの議論が展開されています。この中では、日本のODAについて批判的に評価し続けてきたNGOからの視点による論考も盛り込まれています。

終章のまとめのなかで3人の編者は、日本の援助の歴史からは2つの重要な価値観がみえると述べています。一つは、「相手国への信頼」であり、もう一つは、「自助努力(援相手が助から卒業していくこと)を促す」です。そして、この2つの価値観は、発展途上国がより強くオーナーシップ(主体性、自己決定権)を求める傾向が強まるなかで、さらに重要になってきていると指摘しています。

執筆には編者のほか、JICA研究所から、細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザー、小寺清研究所顧問(元JICA理事)、後藤幸子研究員、ゴメズ・オスカル研究員、峯陽一客員研究員(同志社大学教授)、岡部恭宜客員研究員(東北大学教授)、JICAから辻一人客員専門員(埼玉大学教授)も加わっています。

編者
加藤 宏、 ジョン・ペイジ、 下村 恭民
発行年月
2015年11月
言語
英語
ページ
408ページ
研究領域
開発協力戦略
ISBN
9781137505378 (paper)
9781137431363 (ebook)