日本は世界の開発問題とどうかかわってきたか:ODA60周年を記念した公開シンポジウムを開催

2014.11.28

2014年11月20日、JICA研究所は公開シンポジウム「日本は世界の開発問題とどうかかわってきたか:ODA60年の歴史の振り返りとポスト2015年開発アジェンダ」を開催しました。

2014年は日本が政府開発援助(Official Development Aid:ODA)を開始してから60周年を迎える節目にあたります。他方、ミレニアム開発目標(MDGs)の目標年2015年を間近に控え、2015年以降の国際開発の枠組みや、具体的な指標設定に関する議論が最終段階を迎えています。JICA研究所は、ポスト2015に向けて日本のODAを再評価することを目的とし、研究プロジェクト「ポスト2015へ向けた日本の開発援助の再評価(国際協力60周年事業)」を実施しています。

本シンポジウムは、開発援助についての国際的な議論をリードしてきた有識者や、経験豊かな実務者を国内外より迎え、日本が行ってきた国際協力の60年を分析的に振り返るとともに、そこから教訓を引き出して、今後の日本そして国際社会全体が進めていくべき国際協力のあり方について議論することを目的に開催されました。シンポジウムでは、学識者のほか、日本政府関係者、民間企業、NGO、途上国関係者、国際機関関係者など、27名が登壇し、在京大使館関係者や国内の研究者などを含む約200名が参加しました。

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オープニングセッション

オープニングセッションでは、田中明彦JICA理事長の挨拶に続き、石兼公博外務省国際協力局長、イブラヒム・アサネ・マヤキ アフリカ開発のためのパートナーシップ(NEPAD)長官、ヴォー・ホン・フック元ベトナム計画投資大臣、シリル・ミュラー世界銀行副総裁が基調講演を行い、それぞれ日本のODAの実績や特徴、今後の方向性や期待について触れました。

シンポジウムは4つのセッションで構成されました。「概要および日本のODAの政治経済分析」をテーマとしたセッション1では、冒頭加藤宏JICA理事が戦後から今日に至る日本のODAの歴史的変遷と特徴についての発表を行いました。これを踏まえ登壇者からは、日本のODAが産業化による成長を推進し、アジア諸国で大きな成果をあげたことを評価するコメントの他、ODA政策に関する内外とのコミュニケーション向上の必要性の指摘などがなされました。

「アジア型開発援助モデルとは」と題したセッション2では、下村恭民法政大学名誉教授がモデレーターを務め、アジア型開発モデルの特徴と有効性について議論されました。その中では、日中韓のODAに共通する特徴として、自らの開発経験に根差した支援を行っていること、また、インフラ開発による投資環境の整備や産業振興を通じて包括的な経済成長を重視していることが挙げられました。さらに、日本の支援を受けた側の視点から、インドやベトナムの経験が共有されました。

「国際機関と日本、開発金融のグローバル・ガバナンスの未来」と題したセッション3では、冒頭小寺清JICA理事が、戦後日本と国際機関(国連機関、世界銀行など)の関係構築の歴史を振り返りました。これに続く議論の中では、地球規模課題の解決に向けては、多国間のパートナーシップによる取組が必須であることや、国際機関の持つデータや知見の地球公共財としての高い価値などについて言及されました。さらに、日本は国際機関に対して一貫した政策を持つべきであるとの指摘や、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの新興ドナーは、環境社会配慮やセーフガードについて、国際的な水準を満たす事業運営が期待されるといった見解が出されました。

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パネルディスカッション

最後に、「ODAの未来とポスト2015年開発アジェンダ」と題したセッションでは、NGO、民間企業や財団の関係者も交えて、開発協力の今後の在り方について意見交換がなされました。開発を取り巻くアクターが多様化している中では、それぞれのアクターの優位性・補完性を活かした新たなパートナーシップの構築と同時に、市民社会を包摂するボトムアップの制度の構築、技術のイノベーション、人道主義や理想主義的な視点、民間セクターとの連携などが重要であることが指摘されました。

最後に堂道秀明JICA副理事長が挨拶し、日本型援助の優位性と限界を適切に認識し、真のパートナーシップを構築していく必要があると述べ、シンポジウムを締めくくりました。

本シンポジウムの結果については、研究の成果として最終的にとりまとめられる英文書籍に反映される予定です。

本シンポジウムの記録動画は、JICA研究所のYouTubeチャンネルで視聴することができます。また、シンポジウムの登壇者や、研究プロジェクトの参加者によるメッセージ動画を、本ウェブサイトのマルチメディアページに掲載しています。ぜひご覧ください。

YouTube
https://www.youtube.com/user/jicaresearchinstitut/feed

シンポジウムプログラムの詳細はこちら

開催情報

開催日時:2014年11月20日(木)
開催場所:JICA市ヶ谷ビル

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