No.8 開発途上国における都市交通インフラのスピルオーバー効果を取り込んだマスタープラン段階からのインフラファイナンス検討の標準的なワークフローの提案

  • #フィールドレポート

JICAをはじめとする開発援助機関は、急激な都市化が進行する開発途上国の都市を対象に都市交通マスタープランの作成や都市交通インフラへの技術及び資金協力を通じた支援を行っている。一方で、都市鉄道、LRT (Light Rail Transit)、BRT(Bus Rapid Transit)の整備をマスタープランで提案しても、コストが膨大なため実現に結びつかない、あるいは運営段階での資金ショートにより運行に支障をきたす場合があり、マスタープラン段階からの実効性のあるインフラファイナンスのあり方が課題となっていた。

そこで、筆者らは、インフラが周辺地域に及ぼすスピルオーバー効果(Spillover effect、沿線地域における民間投資の活性化や雇用の増大など鉄道インフラ等の開発によるその周辺地域への間接的な経済効果)に着目し、同効果を取り込んだ新たなインフラファイナンスの実務の促進に資する研究を実施した。具体的には、3ヵ国の途上国都市の関係機関を対象にしたスピルオーバー効果を取り込んだ新たなインフラファイナンスに関するヒアリングを実施し、その過程で得られた知見を踏まえ、マスタープラン段階におけるスピルオーバー効果を取り込んだインフラファイナンス検討の標準的なワークフローを提案した。同手法適用の判断の観点として、スピルオーバー効果を活用したファイナンス手法導入に関する交通当局/交通事業者と税務当局の方針の一致の程度、非運賃収入向上へのインセンティブ、公示地価制度を含む固定資産税制の成熟度とデータ公表にあたっての社会状況の三点を指摘するとともに、スピルオーバー効果計測のデータソースとして、実務的観点から地価データの有効性を指摘した。インフラファイナンスの選択肢の一つとして同手法の検討をマスタープラン段階から実施することで、開発途上国の都市交通インフラのファイナンスの課題解決が促進されることが期待される。

キーワード
開発途上国、都市交通、スピルオーバー効果、インフラファイナンス、マスタープラン

著者
鈴木 智良、 川端 剛弘、 田中 圭介、 藤田 勇樹、 吉岡 七輝
発行年月
2021年12月
言語
日本語
ページ
33ページ
関連地域
  • #アジア
  • #中南米
開発課題
  • #運輸交通
  • #都市開発・地域開発
研究領域
経済成長と貧困削減