Economic Valuation of Safe Water From New Boreholes in Rural Zambia: A Coping Cost Approach

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サブサハラ・アフリカ地域の多くの国々では、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)のターゲット6.1に挙げられている安全な水への普遍的なアクセスの達成がいまだに遅れています。

本論文では、JICAが過去にザンビアで実施した地下水開発のプロジェクトから得られたデータを分析しています。同プロジェクトは、安全な水と安定した水資源へのアクセスを改善することによる水因性疾患の減少を目的に、2012~2013年に手押しポンプ付き深井戸施設を建設したものです。

その新たに建設された深井戸の安全な水の経済価値を、本論文では処理費用アプローチ(coping cost approach)を用いて試算しています。主な研究結果の一つとして、総支出に占める水汲みの時間的価値はベースライン調査時の約10%からエンドライン調査時の約3%に減少したものの、プロジェクト自体の効果を見ると、家計の水汲み需要が増えており、水汲みの負担が減少したわけではないことが示されました。これは、新しい深井戸から安全な水が提供されるようになったことで水の需要が高まり、より多くの水を得るために水汲みの回数が増加したためです。この結果、深井戸施設建設による内部収益率(Internal Rate of Return: IRR)はそれほど高くないことが分かりました。

また、本論文では、プロジェクトによる健康面での効果の重要性も強調しています。労働年齢成人の下痢の発生率が下がったことによる生産性の向上が見られるほか、子ども、特に未就学児童の下痢も減少しました。そのため、内部収益率の計算では考慮されない健康への効果を評価するために、障害調整生存年数(Disability-adjusted Life Year: DALY)という指標を用いて、プロジェクトがもたらす健康への良い影響について議論しています。

本論文はJICA緒方貞子平和開発研究所の研究プロジェクト「アフリカにおけるデータ活用研究」の成果です。ジャーナル「Water Resources and Economics」に掲載され、以下のリンクからご覧になれます。

著者
島村 靖治、 清水谷 諭、 田口 晋平、 山田 浩之
発行年月
2022年1月
言語
英語
ページ
23ページ
関連地域
  • #アフリカ
開発課題
  • #保健医療
  • #水資源
研究領域
経済成長と貧困削減
研究プロジェクト