Institutional Environment Pressures Perceived by Bilateral Development Cooperation Agency's Constituents

  • #その他論文等

新制度派組織論では、「組織を取り巻く制度的環境が組織の行動を決定づける」と主張します。この理論を用いた研究は、多国籍企業の海外子会社が、本社と受入国双方の制度的環境の影響を同時に受けるという、国内企業には見られない環境に置かれていることから、これらを頻繁に研究対象としてきました。しかし、海外子会社と同様の環境にある公的組織の在外事務所が研究対象となることはほとんどありませんでした。また多国籍企業の海外子会社を対象とした研究でも、組織の構成員が制度的環境をどう感じているのかを論じるものは少ないです。

そこで本研究は、公的組織の一つである二国間開発協力機関を対象に、同機関に属する4つのグループ、すなわち、本部管理職、本部非管理職、在外事務所管理職、在外事務所非管理職が、本国と受入国からの制度的環境の圧力をどのように感じているかを調査しました。

具体的には、6つの仮説を立て、オンライン調査を通じて入手したデータを、マン・ホイットニーU検定を用いて分析しました。結果は、本国および受入国からの制度的環境圧力に関しては、本部と在外事務所の職員間では統計的に有意な差異は見られませんでした。

例えば、本部の職員も在外事務所の職員も、本国からの非常に強い説明責任の圧力を感じていましたが、受入国政府や技術協力プロジェクトのカウンターパートからの支援に対する要望や期待に関する圧力は、それほど強く感じていませんでした。

一方で、本国からの説明責任の圧力については、本部管理職と同非管理職間で有意な差が確認されました。同様に、受入国政府からの要望や期待に関する圧力についても、在外事務所管理者と同非管理者の間で有意な差がありました。在外事務所の管理職と非管理職はそれぞれ「重複する制度的環境」を感じていましたが、両者間の差異はわずかでした。

調査結果を新制度派組織論の視点で解釈すると、二国間開発協力機関の在外事務所は受入国からの要望や期待よりも、本国への説明責任に対する正当性をより重視すると捉えられます。在外事務所の管理職がより強く制度的環境圧力を感じていることが、在外事務所が本国の制度的環境への正当性をいっそう重視することにつながっている可能性もあります。

本論文は、JICA緒方貞子平和開発研究所の「二国間開発協力機関の在外事務所による重複する制度的環境への対応に関する研究」の一環として2022年3月にJICA緒方研究所ワーキングペーパーNo.228として発刊された原稿を精査したものです。2022年11月に学術ジャーナル「Public Organization Review」(Springer Nature社)に掲載されました。論文は以下のリンクからご覧ください。

著者
伏見 勝利
発行年月
2022年11月
言語
英語
ページ
19ページ